再認識される学校図書館の重要性

北海道北広島市で読書活動活性化フォーラム

 スマートフォンやインターネットなどの普及で児童生徒の本離れ、活字離れが進んでいる。その一方で子供たちの読書習慣を育てる学校図書館あるいは公立図書館の役割の大きさが再認識されつつある。もっとも、北海道において教育現場では学校図書の機能が十分果たされていないという指摘もある。北海道教育委員会石狩教育局はこのほど、学校図書の機能充実と課題解決を目指すべく「読書活動活性化フォーラム」を開催した。(札幌支局・湯朝 肇)

司書の配置が不可欠/第2の保健室の役割も

再認識される学校図書館の重要性

読書活動活性化フォーラムで行われたシンポジウム

 「ようやく学校図書館の重要性が認識されてきたというところでしょうか」-8月31日、北海道の北広島市内で開かれた「平成30年度石狩管内地域の読書活動活性化フォーラム」(主催、北海道教育委員会石狩教育局)で全国学校図書館協議会学校図書館スーパーバイザーの野村邦重氏は、これまでの教育現場における学校図書館の脆弱(ぜいじゃく)性と今後の新たな取り組みに対する期待を込めてこう語った。

 道教委が今年3月に報告した調査によれば、北海道内で学校図書館で学校司書を配置している割合は、平成28年度で小学校では14・2%、中学校では14・9%、高校は5・6%になっている。

 「小・中学校学習指導要領解説総則編」において、「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めるに当たって学校図書館の活用に加え、地域の図書館など積極的に活用すべき」とあるにもかかわらず、実態を見れば小・中学校では学校司書が配置されているのは7校に1校、高校においては20校に1校の割合にすぎないことを示している。

 野村氏は、「北海道では学校司書が配置されていないばかりか、普段は図書館に鍵が掛かっていて自由に入れず、読みたい本があれば担任の先生に言って鍵を開けてもらう学校も結構ある。また、学校司書への待遇も良くない」と実情を語る。改善の兆しが見えてきたのは文部科学省が近年になって図書館の機能の充実を唱え始めた平成28年11月のこと。

 学校図書館における現状と課題を踏まえ、さらなる学校図書館の整備充実を図るために「学校図書館ガイドライン」を各自治体の教育委員会および学校に通達を出した。それによれば、学校図書館の役割として、これまでの児童生徒の読書活動や読書指導の場としての「読書センター」から、学習や調べ物をする場としての「学習センター」、また児童生徒や教職員の情報ニーズに対応する「情報センター」としての機能を有していると位置付ける。

再認識される学校図書館の重要性

シンポジウムの後に行われた参加者同士によるビブリオバトルの実践演習

 さらに、ガイドラインは、「(学校図書館が)一時的に学級になじめない子供の居場所」としても有効だと指摘。すなわち、学校内の図書館が“第2の保健室”ともいうべく「癒やしのセンター」になるとして学校教育における図書館の積極的な活用を訴える。もっとも、学校図書館の整備充実を図ろうとすれば、おのずと学校司書の配置は不可欠にる。野村氏が「ようやく学校図書館の重要性が認識されてきた」と期待を込める理由はここにある。

 8月31日実施の「読書活動活性化フォーラム」は、石狩管内の学校図書館関係者や地域図書館職員、さらに子供の読書活動推進に携わるボランティアなどを対象に開かれた。そこではまず、道教委が今年度から5年計画で始めた「北海道子どもの読書活動推進計画『第4次計画』」について説明。

 続いて道内でも先駆けて積極的に読書活動を進めている北広島市の事例を中心にシンポジウムを開催。パネリストとして野村氏の他に、新谷良文・北広島市図書館長、菅原聡・同市立大曲東小学校長、読み聞かせなどを行っているボランティア団体「おはなしの会ぽけっと」の石上浩子代表らが壇上に上がり、読書活動を推進するには学校と地域、家庭の連携の重要性を指摘する。

 「北広島市図書館では学校司書のいない学校に図書館司書を定期的に巡回させ、市主催のお話フェスティバルなどでは大学生やボランティアの方々と協力して行っています。読み聞かせ研修だけを取っても一つの機関では限界がある。読書活動の成果を挙げるには地域連携を持つことが重要だ」と新谷館長は語る。

 シンポジウムの後は、参加者同士がグループを作って本を紹介し合い、最も読みたい本を投票で決めるビブリオバトルや本のPOP作りの実践演習を行った。読書は創造力や教養を深めるだけでなく、人間性を高める有力な手段であることは以前から指摘されてきた。北海道の教育力を上げる意味でも読書活動推進事業に大きな期待が寄せられている。