「子どもシェルターおきなわ」2周年でシンポ

那覇市でシェルター利用者の生の声を紹介

 虐待や非行、貧困を背景に家庭で居場所を失った未成年者に安心できる場所を提供し、自立を支援するNPO法人「子どもシェルターおきなわ」が開設2周年記念を迎えた。那覇市で行われたシンポジウムでは、「立ち直るきっかけになり、親との誤解が解けた」というシェルター利用者の生の声が紹介された。(那覇支局・豊田 剛)

父親からの性的虐待が多い沖縄県、自立するまでの支援が課題

「子どもシェルターおきなわ」2周年でシンポ

シンポジウムに登壇した(左から)「こどもシェルターおきなわ」の横江崇理事長、ゴザ児童相談所の後野哲彦福祉司、「島添の丘」の新垣和彦養護課長ら=4月21日、沖縄県那覇市

 大人に裏切り続けられた結果、人を信じられなくなった。家での居場所を失い、お金欲しさに風俗で働き始める。そんな自分が嫌になって何度もリストカットをしてしまう。

 これはシェルターに保護される未成年女性によくある話だ。こうした人たちに生きる意味を持ってもらい、自立へと誘(いざな)おうと、2016年5月、弁護士らが中心に「子どもシェルターおきなわ」を開設した。

 全国初のシェルターは2004年、東京で作られ、沖縄は14番目だった。入所者の保護を第一に考え、所在地は非公開となっている。

 シェルターおきなわは現在、およそ15~18歳の女子を対象に、無料で寝泊まりする場所を提供している。2017年度は延べ17人(実人数14人)が利用し、平均滞在日数は28日だった。16年度よりも実人数は3人増えたが、滞在日数が7日程度減少した。

 利用者の傾向として、再婚によって血のつながらない親子が一つの家族になる「ステップファミリー」が多い。利用するきっかけは、「虐待を受けて家出した」というのが過半数で、肉体的暴力よりも精神的暴力が目立つ。

「子どもシェルターおきなわ」2周年でシンポ

シンポジウムには多くの教育関係者が集まった=4月21日、沖縄県那覇市

 シンポジウムでは、家出をしようとしていたところ、シェルターに保護された18歳の女子高生(当時)のインタビューが映像で紹介された。支援を受けた女子高生は支援で家族との話し合いを経て自宅に戻ることができたという。彼女らは「自分の気持ちを整理したことで、家族と向き合えるようになり、わだかまりがなくなった。大切な時間だった」と語っている。

 同法人理事長の横江崇弁護士は「現在は短期滞在が基本で、中・長期的に支えることは同シェルターだけでは難しい」と述べ、長期的支援を今後の課題とした。また、「シェルターの退所先が不足し、アフターケアが手薄になっている」と指摘した。

 シンポジウムでは後半、横江氏、児童養護の専門家や職員が登壇し、10代後半の子供たちを支える社会の受け皿と自立支援について議論した。コザ児童相談所の後野哲彦福祉司は、沖縄県で子供が受ける虐待のうち、性的虐待が2・9%で、全国の1・3%よりも際立って多いと指摘。中でも父親から受ける虐待が多いと報告。

 児童養護施設「島添の丘」の新垣和彦養護課長は、児童養護施設の利用者の6割が虐待を理由に入所していると説明した。施設では自立まで支援することが法的に求められているものの、「退所後まで目が届かないことも多い、というのが現状」と課題を挙げた。

 それ以外に、「退所後も関われるような人間関係を作っていくことが大事」「自立後に自ら解決できない人への支援として、情報を提供し決断を導くことが重要だ」という意見が出た。

 沖縄県中央児童相談所の前川英伸所長は、「10代後半の女子は困窮から夜の仕事に走り、精神的不安定に陥る。ストーカーや性暴力の被害も増えている」と指摘した上で、「シェルターは寄り添い型の支援で、子供のニーズに合った行き場所」と高く評価した。一方、シェルターについての認知不足や行政や民間の支援が少ないことから、関係団体が連携を密にすることの大切さを訴えた。