「TOEFL」免除、推薦文なしで留学

沖縄尚学が海外32校と協定締結

 「強くて優しい文武両道のグローバル教養人」づくりを目指している沖縄県那覇市の沖縄尚学高校(名城政次郎校長)は昨年12月、米国の4大学と推薦入学協定を締結した。今年度末までに海外の高校・大学との提携は32校になる。グローバル社会に対応した教育が評価され、非英語圏のための英語テスト「TOEFL」試験や推薦文なしの破格な条件での留学が可能になる。(那覇支局・豊田 剛)

グローバル社会対応の教育が評価受ける

米4大学との提携「大きな一歩」に

「TOEFL」免除、推薦文なしで留学

留学説明をするメアリー・エレン氏(右)とアンドリュー・ブリィウィック氏=1月18日、沖縄県那覇市の沖縄尚学

 12月に提携したのはワシントン州立のクラーク・カレッジとワシントン州立大学、アイダホ州立大学、ハワイ州立のハワイ大学キャピオラニ・コミュニティー・カレッジ。協定は、英検2級以上や沖縄空手などの資格を持ち、希望する同校3年の生徒について誰でも、名城政次郎校長(理事長)が大学に推薦し、大学が受け入れた。協定の締結は、NPO法人・琉米歴史研究会の喜舎場静夫理事長が仲介した。

 協定は、英検2級以上を持ち、一定の評定に達するという条件を満たした生徒を学校が推薦し、大学側が受け入れるという内容だ。

 入学者は2年の学習過程を終えた後、米国内の4年制大学への編入、あるいは、日本の大学への編入が想定される。同校の名城政一郎副理事長は「今の時代は二つ以上の文化を知っている人間が必要。米国で学び、戻ってきて活躍してほしい」と期待を込めた。

 沖尚はこれまで、米国、オーストラリア、台湾など海外だけで30を超える学校と協定を結んだ。ただ、「協定は無条件では結ばない」という。「担当の先生と会って、目標を共有できるところとだけサインしている」と名城氏は強調する。単なるビジネスが目的であればサインをしないという姿勢を貫いている。

 今回、協定を結んだ4大学は、英検と平均評定の最低ラインを満たせば、銀行の預金残高や推薦文、自己紹介文が要らないという異例の措置を取っている。出願料も無料だ。

 これまで、留学をする際はTOEFLで一定の点数を取ることが義務付けられていたが、「TOEFLが必要でなくなることが革命的。破格の条件」と名城氏は強調する。

「TOEFL」免除、推薦文なしで留学

インタビューに応じる名城政一郎副理事長=1月18日、沖縄県那覇市の沖縄尚学

 これまで、留学をする際はTOEFLで一定の点数を取ることが義務付けられていたが、「TOEFLが必要でなくなることが革命的。破格の条件」と名城氏は強調する。

 「これまでのグローバル化社会は、日本が西洋をまねた。すなわち、日本が自分のルールを諦めて、相手のルールに合わせていた。ところが、今回は英検に関して米国側が譲歩して日本に合わせてくれた」

 この仕組みが広がれば、米国の大学に進学する高校生が増え、日本の大学は受験や教育のあり方から変わらざるを得ないと名城氏は指摘する。

 米国の各大学が沖尚の教育を完全に信頼しているからこそ、革命的な協定が結ばれたと言える。沖尚の教育の特徴として、沖縄が発祥とされる空手は必修で、中1から高2まで週1、2回授業をしている。また、国際教養人育成を目指し、グローバル化に対応した教育に取り組んでいる。

 今月17日と18日、沖縄尚学で米国留学説明会が行われ、アイダホ州立大学から国際進路アドバイザーのメアリー・エレン氏とグローバル・スチューデント・サクセス・プログラム(GSSP)事務局長のアンドリュー・ブリィウィック氏を迎えた。両氏は、「アイダホ州立大にとって、沖尚が初の日本の高校との協定校となった」と説明した。

 高校の成績優秀者には年間8000㌦(約90万円)の奨学金が付与される。3年次に日本の大学に編入するという前提であっても「喜んで受け入れる」としている。

 同大は昨年夏に、学士課程1年次に相当するGSSPを開校し、高校生活から米国の大学生活への移行を学業面と文化面から支援している。

 ブリィウィック氏は、「アイダホ州立大には80カ国から約800人の留学生がいるが、日本人はわずか12人しかいない」と説明。積極的に申し込んでほしいと訴えた。今回の4校との協定は、「沖尚にとって大きな一歩となった」と名城氏は実感している。