北海道14管内の児童・生徒が地域の素晴らしさを発信

道教委「キャリア教育サミット」を開催

 人口減少、過疎化という地方の課題に対して教育面から取り組む北海道教育委員会は、3年間の限定事業として小中高一貫の「ふるさとキャリア教育」を進めてきた。小学校の児童、中学校・高等学校の生徒が地域の自然や産業について体験活動を通して学び、その一方で保育園や老人ホームなどの施設を訪問し、実際に触れ合う中で命や家庭の大切さを知るプロジェクトに取り組んだ。その3年間の集大成ともいうべき「北海道キャリア教育サミット」がこのほど、札幌市内で開かれた。(札幌・湯朝 肇)

保育・福祉体験で“家族”や“命”を考える

北海道14管内の児童・生徒が地域の素晴らしさを発信

「北海道キャリア教育サミット」で地域の魅力や特性を説明する小中高の児童生徒=10月31日

 「僕たちの町、羅臼で取れた昆布と塩のサンプルを配っています。皆さん、ぜひお持ち帰りください」-10月31日、札幌市内のホテルで開かれた「北海道キャリア教育サミット」(主催・北海道教育委員会、以下・道教委)で、発表者の一人である羅臼小学校6年の佐藤努夢君が参加者に向かってこう語って報告を締めくくった。羅臼町は世界自然遺産に指定された知床半島の南側中央部にある町。自然が豊富で特に昆布など水産物が豊富な所である。佐藤君は小学校での「地域ダイスキ!プロジェクト」に参加し、地域の魅力や特性を勉強していった。

 サミットで佐藤君ら根室管内の小中高生が発表したテーマは、「『知床開き』など地域資源を活用した郷土愛の醸成」。小学生は3年間、知床半島に多数生息するヒグマの生態を調べることでヒグマとの共生を考えた。中学生は羅臼町の産業を知るために職場体験し、パンフレットを作成し機会あるごとに配布していった。さらに高校生はシャチやオオワシ、幻想的な光を放つヒカリゴケなどの自然観察を通して羅臼町の特性を認識するとともに、高校生チャレンジグルメコンテストへの参加を通して地元の食材をPRするなど、サミットでは小中高生が自らの地域貢献の様子を報告した。

 道教委は平成27年度から3年間の限定事業として「小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業」を進めてきた。その柱は二つのプロジェクトから構成されている。一つは地域の良さや地域で生活することの意義を体験を通して学ぶ「地域ダイスキ!プロジェクト」。もう一つが、家庭や子育てへの理解を深める「子どもダイスキ!プロジェクト」である。何よりもこの事業の特徴は、小中学校、高校が連携を取りながら12年間一貫して体系的に地域の特性を学びながら郷土への愛着や理解を深めていくという明確な狙いがあること。

北海道14管内の児童・生徒が地域の素晴らしさを発信

会場には各管内の児童生徒たちが作ったブースが設けられた

 この日のサミットには根室管内を含めて14管内から研究指定校が参加。北海道で一番トマトの出荷量の多い日高管内の平取町の小中高生らは、トマト農家での体験活動やトマトを使った調理レシピの作成と実演、さらに地元飲食店での販売実習を行ったことを報告。また平取町はアイヌ文化の拠点となっていることからアイヌ語やアイヌの風習などアイヌ文化への理解を深めたことを発表した。

 一方、札幌の隣町、北広島市の小中高生は社会福祉を中心とした町づくりを理解するための体験的学習に取り組んだ。研究指定校となった北広島西高校の周辺が同市のノーマライゼーション推進地区であったことから、地域の特別養護老人ホームや児童養護施設などを訪問し、手話・車いす体験(小学生)や除雪ボランティア(中学生)、福祉施設でのインターンシップ(高校生)を通して「地域との触れ合いの大切さを学んだ」(北広島西高3年の川原咲良さん)と説明する。

 今回の「北海道キャリア教育サミット」について、北海道教育庁の柴田達夫教育長は「人口減少、過疎化が進む北海道で、その流れを食い止めるには地域の未来を背負う子供たちが、地域の良さを知り、家族を持つことの素晴らしさや命の大切さを知ること。そのためにも学校と地域、家庭が連携して子供たちを育てていくことが重要となります」と語る。

 今後の展開として道教委は、「サミットはこれまでの事業の集大成としての位置付けですが、これからも研究指定校が取り組んだ内容をモデルとして、全道の自治体が小中高一貫のふるさとキャリア教育を進めることができるように支援していきたい」(北海道教育庁学校教育局高校教育課)と話す。