国政課題も考える教育を
序盤の数日を除いて雨天が続いた衆院選は最後に台風が列島を直撃するおまけまで付いて終了した。その中で唯一、晴れ間が見られた18日午前、埼玉県の本川越駅前で安倍晋三首相が応援演説を行ったが、聴衆の中に制服を着た高校生の姿がたくさん見られた。
単純に考えると現在、高校3年生の半分は有権者だから、国政選挙の現場で普段は直接目にすることもできない首相の演説を聞いて、何が国政の争点になっているかを知ることも重要な学びの一つだろう。少なくとも、主権者教育と称して選挙制度を学んだり、模擬投票の授業を行うよりは、体感的に政治を知ることができるだろう。
さらに重要なのは、国政のさまざまな課題について自分なりの見解を積み上げていくプロセスを習得することではないだろうか。もちろん、憲法9条の改正や安保法制は違憲かどうかなど、イデオロギー的な背景が強くて政党が杓子(しゃくし)定規的な見解しか示せていない問題は学校教育にはふさわしくない。しかし、政党もいまだに十分な対策を出せていないような問題、例えば少子高齢化対策や消費増税分の使い方など、人口減少社会の到来と関連した問題について、その現状や背景を独自に調査して、今後の対策について知恵を出し合うことは、学校教育の中で十分に取り組むことができるし、その価値があるはずだ。
衆院選の費用は600億円規模になる。民主主義を維持するための費用とはいえ、そんな巨額を使った国を挙げてのイベントを教育の場に取り込む知恵も必要なはずだ。日教組のイデオロギー教育を警戒するあまり、主権者として本当に必要な判断能力を養う教育が、おろそかになってきたのではないか。今はインターネットを通じ必要な情報は、たやすく手に入る。高校生ともなれば、調査や討論を通じて政党の主張や公約を超える名案を出す生徒もいるはずだ。
(武)