問題解決に大人の関与が不可欠、沖縄・那覇でいじめシンポジウム
ネットワーク全国代表の井澤一明氏 学校の仲介が基本
沖縄の小中学校で重度のいじめ事件が起きている中、民間非営利団体(NPO)「いじめから子供を守ろう!ネットワーク沖縄」(富川昇代表)は3日、那覇市でシンポジウムを開き、いかにしていじめを早期発見し対処するかについて議論した。学校だけに頼らず、親が関与して早期発見、早期対応することの重要性を確認した。(那覇支局・豊田 剛)
親の早期発見・対応の重要性確認、子供の些細な変化に注意を
昨年、沖縄県豊見城市の小学4年生がいじめを原因に自殺し、県内の教育現場に大きな衝撃を与えた。学校側は自殺発覚当初、いじめとの因果関係を否定。教育委員会と一緒に事実隠蔽(いんぺい)を図ろうとした可能性が強い。
今年に入ると、沖縄市の中学校で1月、1人の無抵抗の男子中学生を複数の中学生が殴る蹴るの暴行をしていたことが、投稿動画により発覚した。その際、周りにいた生徒は誰一人として制止しようとしなかった。
さらに、同じ学校に通う中2の男子生徒が昨年、30代の男性臨時教諭から顔や肩を殴られる体罰を受けていたことが分かった。
いじめ解決に取り組む「いじめから子供を守ろう!ネットワーク沖縄」はこうした状況に危機感を抱き、全国代表の井澤一明氏を講師に招いてシンポジウムを開催した。
同ネットワークは過去10年間で、いじめ問題7000件余の電話相談、数万件のメール相談に応じ、いじめの8、9割を解決してきたという。
講演で井澤氏は文科省のいじめ追跡調査のデータを紹介した。小中学校の間にいじめを受けたことがない子は1割程度だという結果が出ている。すなわち、「9割の子たちがいじめたり、いじめられたりしながら学校生活を送っている」が、昔と違って「子供たち同士で解決できていない」と指摘する。
いじめが発覚した場合、「親同士で話せば、ほとんどの場合は解決するが、親が絶対に認めない事例があるため、学校に仲介してもらうことが基本だと井澤氏は強調する。しかしながら、学校側の当事者意識や問題解決能力が低いことから、「国の法律の中にいじめを放置・隠蔽する教師は懲戒免職することを明示する必要がある」との持論も展開した。
講演に続いて行われたシンポジウムでは宜野座村議の真栄田絵麻氏、少年サポート指導員で保護司の岡田修氏、元那覇市PTA連合会会長の徳留博臣氏が登壇した。
本人を含め、娘、孫と3世代にわたっていじめを受けた経験がある真栄田氏は、「子供と向き合って話し合うことで娘がいじめられていることが分かった」と振り返り、「問題解決には女性の役割が大事。母親が毎日、ちゃんと子供たちに声を掛けてあげるべきだ」と訴えた。
日ごろからいじめや非行の解決に携わっている岡田氏は「いじめに遭っている子は怖くて発言できないし、悩んでいる子は助けてと言えない」という。「いじめられている子は基本的に余裕がないのが特徴で、体にあざができるなど、些細(ささい)な変化を見逃さないでほしい」と呼び掛けた。一方、「いじめている方はほとんど意識がない」のが特徴だという。
徳留氏は、「ある学校でいじめの実態を調べるアンケートがあったが、『犯人探しをしません』と書かれていて驚いた」と話し、いじめに基づく事件には一義的に学校に責任があると強調。「いじめは最初は些細なことから始まっていて、だんだん常態化、悪質化していく」と指摘。その上で、「最初の段階できちっとした指導ができていれば助かったケースもある。親子のコミュニケーションや何気ない会話で分かることがある」と述べた。
宜野湾市の小学校PTA役員は、「学校現場と教委はこれまでかばい合う関係にあったが、SNSで分かるように情報がすぐに拡散する」と指摘。隠蔽があってはいけないという流れになることに期待を示した。






