北海道師範塾「教師の道」が実践報告を実施

諦めない心と不断の努力が実を結ぶ

 教育の現場が荒れていると言われて久しい。学級崩壊、モンスターペアレント、いじめなど難題が山積する。しかし、そうした現場を預かる教師の苦労は大変なものがある。ましてや新米教師にはかなりのプレッシャーが押し寄せる。北海道師範塾「教師の道」(吉田洋一塾頭)では毎年2回(冬季、夏季)の養成講座で若手教師による実践活動報告を実施している。(札幌支局・湯朝 肇)

新米教師の工夫凝らした授業に成果

北海道師範塾「教師の道」が実践報告を実施

着任1年目の教育実践を報告する浦崎菜摘教諭

 「教師として初めて赴任して副担任を任されましたが、正直大変です。何で私がここにいるの、と思うことが何度もありました」―1月10,11日の2日間にわたり札幌市内のホテルで開かれた北海道師範塾「教師の道」の養成講座で、北海道函館水産高校教諭の浦崎菜摘さんは、教師着任1年目をこう振り返った。

 同校は道南の北斗市にある水産分野を扱う高校で昭和10年(1935年)に創設された歴史ある職業高校。海洋技術、水産食品、機関工学、品質管理流通の各科を有し、生徒数は407人(女性68人)の大半が男子生徒だ。

 浦崎さんがこの高校に配属されたのは昨年4月。担当科目は国語と芸術家書道だった。「赴任先が函館に近いということで内心喜びましたが、着任した途端にそんな思いは吹っ飛びました」という。というのも、同校の教員数は60人だが、女性教諭は浦崎さんを含めて3人のみ。若い新人の女性教諭が赴任してくるとなれば、生徒たちも浮き足立つことは予想に難くない。案の定、「隙あらば全員がしゃべりだす。周囲にちょっかいを出す。書道道具で遊ぶ。物に当たる。とにかく、落ち着きがなく、興味のあるところに飛びつくという感じでした」と浦崎さんは散々だったクラスの様子を語る。

 何とか正常な授業を取り戻そうとさまざまな工夫を行っていった。一つはメリハリのある授業を心掛けたこと。例えば、授業に動画を導入した。書道の時間では書道の動画だけでなく、「集中すること」をテーマにしたものなどを流すことによって、書道の心得などを教えていった。また、国語主任やクラス担任との連携を密にし、また生徒との個別面談なども頻繁に行った。

 さらに公開授業を行うことで生徒たちに緊張感を持たせるなど、努力のかいがあって徐々に成果が出てきたという。「まだ途上の段階ですが、考査テストの成績がアップしてくるなどの成果が出てきています。課題もたくさんありますが、諦めずに生徒に向き合っていきたい」と浦崎さんは今後の歩みに決意を語った。

北海道師範塾「教師の道」が実践報告を実施

冬季講座で教師の心得を話す吉田洋一塾頭

 この日の実践報告は浦崎さんのほか、旭川市立春光台中学校教諭の嶋田剛さんが、「国語科授業における主体的な学びを目指す」をテーマに発表した。嶋田さんは同塾の卒業生で教師になって3年目。

 中学校の国語授業では、教科書の本文を批評的に読むことで「主体的に読む意識」を持たせることを心掛けているという。その一つの手法として、生徒が読んだ本文に対して、「説得力があると思う人はノートに○、無いと思う人は×」を書かせ、周囲の生徒同士で、その理由を話し合わせ、自分の考えを確認させるという。さらに、話し合った内容をもとに、自分なりの「批評文」を書いて提出させるという方法を取った。指導の成果として嶋田さんは「教科書の批評読みを通して、社会におけるメディアの情報に対する真偽についても簡単ではあるが触れられる結果になったのは成果だと思う」と話す。

 今回の嶋田さんの発表に対して、助言者の長野藤夫・北海道紋別高等養護学校校長は、「生徒たちに対して、主体的に本や論説文を読む姿勢を植え付けるための手法として批評的な読み方は効果があるが、本文の言わんとするところをしっかりと捉えておくことも大事」と指摘する。

 北海道師範塾「教師の道」は平成22年(2010年)9月に発足した。北海道内の小中学校、高校の現役教師や大学教授などで構成され、将来教師を目指す若者のための養成講座などを展開している。吉田塾頭は「続ける努力、明日への力」と題する講座で教師の心得を力説。「継続は力なりというが、目標を明確にし、その中で感受性や積極性が加味されて開花されていく。思考停止に陥ることなく常に自らを磨いていこう」と力説した。