本との出合いは人との出会い
東京都立多摩図書館が移転オープン
公立図書館では国内最大級の雑誌約1万7000タイトルを所蔵するなど都立多摩図書館が立川市から東京都国分寺市に移転、スケールアップしてこのほどオープンした。午前中、エントランスホールでテープカット、午後から女優で作家の中江有里さんの読書をテーマにしたトークイベントが行われた。
中江有里さんが読書の魅力語る
同館はファッションから学術までさまざまなジャンルの雑誌を自由に閲覧できる。また、所蔵図書約50万冊のうち半数近くが児童書や中高生向けで、子供の読書活動の推進に力を入れているのも特徴だ。閉架書庫の書棚は、多摩産の木材でできたものもあり、特有の木のいい香りがすると評判だ。
国分寺市の井沢邦夫市長は祝辞で、「国分寺市は東京の中央に位置し、図書館最寄りのJR西国分寺駅は中央線と武蔵野線が交差しており、利便性が高い」とアピールする。
年間300冊を読む読書量の出発点について中江さんは「物心がついた頃から、文字が好きで辞書などもよく見ていた。体が丈夫ではなかったので病院によく行った。待合室に置いてあった児童書が好きだった」と子供の頃の本好きが高じて、書評・脚本などの仕事にたどり着いたことを紹介。
NHKBS2「週刊ブックレビュー」の司会を児玉清氏と共に平成16年から5年間務めた。その間に「あなたは中途半端、本当にやりたいことは何なの」と尋ねられ、女優として、作家としての在り方を会話の中から教えてもらった」ことなどを紹介。読書家として、ドイツ文学にも造詣の深い、児玉氏から受けたものは大きかったという。
脚本家となったきっかけは、映画の企画がボツになり、ふいに2カ月間という時間ができた時。仕事を失った喪失感と、どういう役を演じたいか、自分で描いてみようと思った。子供の頃からテレビドラマが好きで、脚本家にも憧れていた。自己流で描いた脚本をNHKが企画した「BKラジオドラマ脚本賞」に応募、「納豆ウドン」が見事入選、放送された。「ラジオは映像がなく、リスナーが想像力を働かせるという点で活字の世界に近い」と中江さん。
日常の生活の中で「読書の時間が取れない」という質問に対して、無理をしないで、空いた時間に併読することを勧める。中江さんは「例えば、通勤する時間の間に読む本、食事の後に読む本、就寝前に読む本をジャンルにこだわらず、数冊を並行して読む、早く終わったら、次の本をそこに入れる」という具合だという。