根岸小で講演「学習指導要領はこう変わる」
21世紀を生きる子供に身に付けさせたい力とは
台東区立根岸小学校で行われた区教育委員会研究発表会に併せ、「学習指導要領は こう変わる 21世紀を生きる子供に身に付けさせたい力とは」と題し、文部科学省初等中等教育局視学官の田村学氏が中心ポイントとされるアクティブ・ラーニングについて、文部科学省初等等教育局教育課程課教科調査官の直山木綿子氏が小学校の英語教育について講演した。
子供の脳が活性化されているか/アクティブラーニングの視点で
文科省初等中等教育局視学官 田村 学氏
約10年ごとに行われている学習指導要領の改訂は12月21日に答申、年度内に改定告示、というスケジュールで進めている。「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」の3点になる。
とくに、「何ができるようになるか」では個別の知識・技能を身に付け、思考力・判断力・表現力を身に付けること。「どのように学ぶか」ではアクティブラーニング(AL、積極的学び)の視点から、子供が自ら問題を発見し解決することを念頭に、深い学びに導く、ということになる。
グレーモードからカラーモードに変わる感じだと認識してほしい。これまでの教育姿勢を全否定するものではない。これまでの指導でも授業で、子供たちの頭の中が活性化してワクワク、ドキドキ、面白い、個々の子供の学ぶ姿勢が積極的になれば、良い授業ということになる。
教師は「これまでの授業がアクティブでしたか?」と自問するのではなく、個々の子供に目を配りながら、子供主体、対話、深い、授業が求められる。考えをまとめたり、ノートしたり、発言したりする、能力を育む、この過程で子供の脳が活性化することが大事。
全国的には、ただ、子供たちが動いていれば、AL?という感覚が多い。子供が主体、子供同士、先生との対話、深い学びに向かう授業が求められる。馳元文部科学大臣は、教育の強靭化計画の中で「深い学び」を強調されていた。
現在の教育現場を見ると、子供が主体的に目的的で自覚的で意図的に判断して行動しているようには見えない。「対話が、自分に貰った知識から主張し、傾聴するだけ」で、今日の授業で学んだことを関連付けて、発表に表れているか、どうか、これが、きちんと成されている時、子供の脳が活性化されている。もっと,改善していく必要がある。
指導者主体の授業が悪く、子供主体の授業が良い、という2項対立ではない。多くを学ぶには指導者主体の場面が多く必要だし、意見を聞き、考えをまとめる作業には子供主体が必要。相互補完するような形がベスト。
「確かな学力」「健やかな体」「豊かな心」を育むことを、単独で考えず、総合的にとらえ、構造化することを目指している。カリキュラム・マネジメントの充実、子供の評価の充実も不可欠だ。
小中高の連携と積み重ねが重要/英語学習について
文科省初等中等教育局教育課程課教科調査官 直山 木綿子氏
次期学習指導要領の英語学習で大きく変わる点は、小学校中学年で年間35コマ(1コマ45分)、高学年では教科として70コマが導入されること。「聞く」「話す」ことが柱で英語に慣れ親しむことが中心になっている。だが、小学校時代に歌やゲームで英語の楽しさに触れ、授業を楽しんだ子供が、中学になって、アルファベット、文法、筆記試験に追われ、楽しさを失って、嫌いになってしまうケースが多い。小学校時代の体験が中学校の授業に生かされていない。小学校、中学校、高校の連携が取れていないためだ。
中学年でコミュニケーション能力の素地を作るとなっており、今の要領次期要領は一緒。高学年になると、コミュニケーションの「基礎」を培うとなる。
中学では「能力を身に付ける」となっていく。目標から能力の「基礎」が取れた形になる。中学の指導方針の意識が低いことに危惧を覚える。高校になるとコミュニケーション能力を「的確に、適切に」使えるレベルに、となっている。目標と教育していただきたい質がグンと上がる。ディベート(討論)やディスカッション(議論)ができる。交渉ができるレベルに到達してほしいというのが文部科学省の狙い。
高校で目指すレベルはかなり高い。英語教育だけで、ディベートやディスカッション、交渉ができるレベルになるか、といえば、難しい。国語など他教科で、日本語での討論や議論ができる教育をやっていかなければ、できるわけながない。「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」および「書くこと」の4技能「積み上げ」が必要だ。
小学校中学年で年間35コマ高学年では教科として70コマを担任が一人で指導する。担任が中心になって、デジタル教材やALT(外国語指導助手)の協力を得ながら慣れない英語を駆使して授業を展開している。
たとえば、What do you like?(あなたは何が好きですか?)という問いに、I like sushi.(私は寿司が好きです)と答える授業内容で、その返答に対して,I like sushi too(私も寿司が好きです)とさらに会話を広げた児童がいた。先生は教えていないのに、tooを付けて会話を広げた児童はすばらしい。児童をよく観察し、その場でVery good(大変よくできました)と大げさでもその場で褒めてあげることも大切だ。