子供たちのふるさと教育に取り組む公共施設
富山県立図書館と金沢市立玉川こども図書館
ふるさと教育を通して、未来を担う子供たちに、ふるさとに対する誇りと愛着、感謝の気持ちを育むことは大切だ。その一翼を公立図書館が担っている。このほど、金沢市の石川県立図書館で開かれた平成28年度石川県図書館大会の第2部会「子どもと郷土を結ぶ」では、富山県立図書館と金沢市立玉川こども図書館の先進的な取り組みが紹介され、参加者の関心を集めた。(日下一彦)
郷土の誇り、愛着、感謝を育む/自発的な学習の契機にも
富山県立図書館の竹内洋介主任司書は、同図書館が昨年度末に発行した「わかっちゃ富山 児童生徒からのレファレンス(参考調査)事例集」(A4サイズ・118ページ)を紹介した。同書には、県内各公共図書館で子供たちからよく質問される75の事例が取り上げられている。作成に携わった竹内さんは、「数年前に開かれた『公共図書館によるふるさと教育支援』の分科会で、児童向けに書かれた郷土レファレンスが非常に少ないことが問題点として挙げられた。それがきっかけになっている」と説明した。
「わかっちゃ富山」の「わかっちゃ」とは「わかるよ」の意味の方言。小学校5年生の利用を目的に、一部の漢字にはルビを振り、解説も入っている。構成は県内を「県全域」「富山市・新川地域」「高岡・射水・氷見地域」「小矢部・砺波・南砺地域」の四つの地域に分け、それぞれ特色ある事例を紹介している。
「県全域」では「地震がおきたらどうしよう?」「富山のくすりは、どうして有名?」「恐竜の化石はどこでとれる?」などのテーマが並ぶ。「地震~」を見ると、同県では江戸時代末期の安政5(1858)年にマグニチュード7・0程度の大地震が発生し、名峰立山で大規模な山崩れがおき、200人以上が亡くなったと記されている。地元の防災計画や避難場所などをインターネットで検索できることを説明している。
「富山市・新川地域」では、戦後、公害病として大きな社会問題となった「イタイイタイ病について」、その原因、裁判とその後の経過などを2ページにわたり取り上げている。「高岡・射水・氷見地域」では、国宝「瑞龍寺の歴史を知りたい」、射水市出身で読売新聞の社主を務めた「正力松太郎について」などを取り扱っている。
「小矢部・砺波・南砺地域」を見ると、小矢部市で出土した縄文時代の大規模遺跡「桜町遺跡について」、戦時中に南砺市に疎開していた「版画家・棟方志功について」、また、地域の衣食住はじめ、特産品、観光地、歴史的な出来事、祭りや工芸品などの伝統文化まで幅広く紹介している。
各文末には、「もっとくわしく知りたい人は」の項目を設けて、子供たちの学習が深まるように手助けになる参考図書や関連施設が網羅され、彼らの好奇心を高めている。竹内さんは「子供たち自身が調べる喜び、見つける楽しさを味わってもらいたい」と話している。
一方、金沢市立玉川こども図書館では、小中学生の調べ学習の手助けとなるパスファインダー「調べるための道しるべ」を作成し、各学校に配布した。「災害について」「宇宙について」「食べ物について」など、子供たちからの質問の多い21のテーマに沿って、キーワードや調べ物に役立つ資料、ウェブサイトなどを一枚の紙にまとめた。夏休みなどの自由研究等での活用にピッタリだ。その中で、ふるさと教育に関連する項目は「金沢について」「伝統工芸について」「伝統芸能について」がある。「金沢について調べよう!」では、兼六園、金沢城、加賀藩、旧町名など20余りのキーワードが並ぶ。それを小学校の社会の副読本「のびゆく金沢」、ジュニアかなざわ検定の参考書「こども金沢市史」などで調べる。
全8巻からなる「かなざわ偉人物語」も金沢市立図書館ならではの取り組みだ。「科学の進歩につくした人びと」「学問や文化の発展につくした人びと」「教育や福祉の分野に活躍した人びと」など、1巻210ページ前後で10人程度の偉人を掲載。金沢三文豪の室生犀星、泉鏡花、德田秋聲、仏教哲学者の鈴木大拙、ジャーナリストの三宅雪嶺らそうそうたる顔ぶれだ。漢字にはふりがなが付けられ、分かりやすい文体で書かれている。同館の岡田奈留美係長によれば、「子供だけでなく、大人たちも郷土の人について学ぶ入門書として利用されている」という。







