復興で一番大切なものはヒト

教育は国家百年の大計

香川県議会議員 有福哲二氏に聞く

 教育こそは国家百年の大計だと、ライフワークとして教科書採択問題に取り組んできている香川県議会議員の有福哲二氏に、教育問題と地域が乗り越えないといけない人口減少問題を聞いた。有福氏は、いざというときに住民が一つになれるような地域コミュニティー力の強化を強調した。(聞き手=池永達夫、横井秀雄撮影)

活力源はコミュニティー/いざという時、一つに
地域に愛着、国に誇り持てる教科書に

香川県の課題は?

 香川県だけがどうこうというのではないが、人口減少社会に向け、将来にわたり持続可能な香川県をどう構築するかということです。

有福哲二氏

 ありふく・てつじ 昭和42年3月5日生まれ。防衛庁長官を務めた大野功統衆議院議員の秘書を務め、28歳で坂出市議会議員に。県議会議員当選4回。自民党香川県連青年部長、自民党香川県連青年局長、香川県議会環境建設常任委員長、香川県議会経済常任委員長を経て、現在、香川県議会自民党議員会政務調査会長を務める。

 しかし、出生率からみれば、20年後の香川県の人口は確実に70万人台になってしまいます。人口問題への対応には、「人口減少そのものを食い止めていく」という考え方と、「人口減少社会に向けて、問題が起きないように経済社会のあり方を改革していく」という二つの考え方があります。当然、両方とも重要です。

 よく言われる少子化も人口減少の要因の一つですが、しかし地方に限れば、人口減少の大きな要因は若者の大都市への流出であり、雇用環境の地域格差によるところが大きいのです。そこで若者の流出を防ぐため、地元の大学の魅力アップ、雇用確保策などさまざまな施策を打ち出していく必要があります。

 人口が減少すると、さまざまな課題が出てきます。例えば水道事業です。このままでは、近い将来、県内各市町の水道事業において、給水収益が大幅に減ることになります。しかし水道料金の大幅な値上げもできず、人件費の捻出や水道設備の更新事業費の工面にも困難が予測されます。

 そこで、本県では2018年に向けて、県民に水道水を安心して安定供給するために、県内8市8町が水道事業の運営効率化を目指し、全国で初めて都道府県内の水道事業の広域統合を実現することになりました。

 一方で、県経済を考えると、人口減少の影響を最小限に食い止めなければなりません。そこで、旺盛な購買意欲をもった外国人に香川県に来てもらうことで、本県での消費拡大と雇用増大につなげようと思っています。

 現在、四国に1泊以上宿泊してくれる外国人観光客は45万人といわれております。そのうち、香川県に宿泊してくれるのは23万人と半数を超えます。外国人観光客が10人来れば、県民1人が1年間に消費する額に相当するといわれており、単純計算すれば2万3千人の人口増加分の経済効果をもたらすことになります。さらに、外国人観光客を誘客するために、窓口となる高松空港の利便性を高めることが重要だと思います。現在、高松空港はソウルが週3往復、台北が週6往復、上海が週4往復、香港が週3往復と国際線が運航しておりどれも好調です。今後は着陸料の引き下げにより新路線誘致を容易にするために、2018年には高松空港の民営化を実現したいと思っています。

政治家としてやりたいライフワークは何でしょうか?

 教育は国家百年の大計です。初当選より教科書採択問題に取り組んできました。また、近年は中高の歴史教科書の自虐史観が話題になっています。私は子供たちに望ましい教科書とは、自虐史観に基づかず、生徒が自国の歴史に誇りを持てる教科書が一番と考えています。しかし、議会では反対する声もあり、そのような教科書を子供たちに使ってもらうために、自民党所属の県会議員でつくる「教科書問題を考える会」の事務局長として研究を重ねてきました。

 しかし、現実は教科書がどのようにして決められているか知らないし、中には無関心で子供が使っている教科書の中身すら見たこともないような親もいます。

 そこで、地域の会合や各種団体に伺い、教科書がどのような過程を経て決められているか、実際に子供たちが使っている教科書を持参して、どのような教科書が使われているのか親の世代に見てもらっています。

 そうすることで、子供たちが使っている教科書が自分たちの頃のものと比べ、漫画や挿絵の多さにびっくりしたり、教科書の薄さに驚いたり、もちろん、自虐史観に基づいた記述を初めて認識したりと、子供たちの教科書に関心を持ってもらうようにしています。

 そうして、子供たちに自国に誇りと地域への愛着をもってもらい。権利と義務のあり方や自立心を芽生えさせるような教育を受けてもらいたいと考えています。

地元では「だんじり」や「太鼓台」などのお祭りに力を入れていると聞きますが?

 先般の熊本の震災や東日本大震災もまだ復興の途中です。復興で一番大切なものはヒトです。被災後の避難所でのコミュニティーが有るところと無いところでは、その後の復興に大きく影響すると聞きます。無いところでは復興後に地域に人が戻らず、コミュニティーが崩壊しているケースも多く聞きます。

 私の地元でも、団地が増え地域コミュニティーに変化が見受けられます。そこで、地域コミュニティーの最たるものといえる祭りに積極的に参加しています。本音を言えば、仲間も待っており、理屈抜きの“祭り男”です。それは、子供の頃から地域の中で育ったことで自然と身に付いたものです。祭りの世話をしている大人は、子供たちからみればヒーローです。自然と大人の背中をみて大きくなっているということです。これからも、いざという時に住民が一つになれるように、地域コミュニティーを大切にしていきたいと思っています。

政治信条として地域密着型の政治を掲げていますが?

 地方議員だから自分たちの地域に貢献することも重要です。私の地元は坂出市と宇多津町です。かつての坂出市は瀬戸大橋の開通と同時に四国の玄関口といわれ、番の州(す)工業地帯を中心とした港湾工業都市として県下第2位の人口を誇っていました。しかし、今では重厚長大産業は国際競争力を失い、景気低迷や市町合併により人口規模で県下第5位になり、中讃地区の拠点都市としての機能も丸亀市に奪われた感があります。一方で宇多津町も中讃地区の交流拠点都市として発展してきましたが、景気低迷で“にぎわい”に陰りがみえています。

 特に坂出市は、瀬戸大橋開通以降人口が減り続け、このままでは2040年には人口5万5千人から3万8千人へと激減が予測されていることから、その対策は待ったなしです。

 そこで、幸いにも坂出・宇多津両方の行政区域にある番の州地区には、県所有の未利用地が多く残っていることから、ここに積極的に企業誘致をかけていきたいと思っています。

 そのために、県はもとより国や市町と連携し、平成23年には高松坂出有料道路の無料化を実現し、さらに平成26年には瀬戸大橋通行料金の全国共通料金化を実現しました。次は、現在、ハーフインターである坂出北ICをフルインター化にすることが重要と考えています。これら全てが揃(そろ)うことで、番の州に通ずる基幹道路である「さぬき浜街道」の車とヒトの流れを大きく変えて、道が持つ集客力や集荷力をアップさせることで、サービス業や物流企業および工場の立地を促したいと考えています。

 そして、雇用創出による地域活性化を図ると同時に、市町の税収を確保することで、市民や町民の皆さんの社会保障の充実にも取り組みたいと考えています。