北海道の未来開く人材を育成、腰を据えた取り組みが必要に
長期総合計画の策定に向けて北海道教育委員会が有識者会議を設置
学力、体力ともに全国平均よりも低いとされる北海道。情報通信や金融・経済などの分野でグローバル化が進む中で、その北海道にも人口減少、少子化の波は確実しかも急速に押し寄せている。今後、北海道の教育はいかにあるべきか、北海道教育委員会は平成30年度からの「新しい北海道教育長期総合計画」の策定に向けて有識者会議を設置した。そこでは、北海道の教育の現状を踏まえ取り組むべき課題、あるべき姿などについて話し合うこととなった。(札幌支局・湯朝 肇)
「ふるさとへの誇りを持ち、自分の夢や目標の実現に向けて挑戦しようとする子供たちが新しい日本の国や北海道の未来を切り開く。そうした人材をどう育てていくかが重要な課題となる。長期的な視野に立った教育総合計画を打ち出していただきたい」―新年度が始まって2カ月ほど経(た)った5月23日、札幌市内で開かれた北海道教育推進会議で北海道教育委員会(以下、道教委)教育長の柴田達夫氏はこう語って、民間から選ばれた同会議の委員らに審議を諮問した。
これまで道教委は平成20年度から29年度までを期間とする「自立」と「共生」を基本理念とした「北海道教育推進計画」を策定。平成25年3月には教育の現状や社会状況の変化を踏まえて改定を行い、さまざまな教育施策を展開してきた。一方、国においては平成29年度で第2次教育振興基本計画が終了し、平成30年度以降の第3次計画の策定に向けて現在、検討が進められているところ。
さらに、今年度中には「社会に開かれた教育課程」という理念の下、学習指導要領が改定されるなど、教育施策は一つの節目を迎えている。道教委としては、こうした事情の中で、平成30年度からの5年間を計画期間とする第5次北海道教育長期総合計画の策定を行う。
同会議の会長に就任した北海道大学大学院教育学研究院の小内透教授は、「子供たちを取り巻く環境は、この北海道においても大きく変化している。とりわけ急速に進むと思われる人口減少、少子化は学校教育に大きな影響を及ぼしていく。そうした状況にどう対応するか。全ての子供たちが家庭、学校、地域の中でのびのびと育ち、具体的な成果として実のある教育をどう実現していくか、皆さんと話し合っていきたい」と挨拶(あいさつ)した。
この日の会議では河野秀平・道教委総務政策局教育政策課長がこれまで道教委が進めてきた北海道教育推進計画の実施状況を説明。北海道における児童・生徒の学力・体力テストの成績の推移、いじめや不登校などの学校現場を中心とした行動からテレビゲームやスマートフォンなどの家庭内での利用状況といった生活習慣に至るまでの調査結果や対応策などについて報告があった。ちなみに、同計画はあらゆる課題項目に対して数値目標を定めており、近くその結果が公表されるが、「新しい北海道教育長期総合計画」では、それらの結果を基に話し合われることになる。この日は、委員からさまざまな意見が述べられた。
例えば、「地域社会に残る子供たちをどう育てていくか。人材の育成教育が重要」、「人口減少に伴い、学校・学級の併合・廃止が進んでくると地域に与える影響は非常に大きいものがある。地域の活力を削ぐことのないような形で統廃合を進めるべきではないか」と提言や「コミュニティースクールを充実させるためには、民間にも入ってもらい、地域との交流を深めることが大事。また、退職教員の活用という方法もある」といった意見が相次いで出された。
今後、会議は回を重ねて討議していくが、総合計画の具体的な方向性や個別・具体的な教育施策、計画の進行管理に適した具体的な成果指標の在り方について話し合われることになる。全国平均を大幅に下回る学力・体力テストの成績、いじめや不登校、過疎化する中での学校教育など、どれをとっても深刻な問題であるだけに腰を据えた取り組みが必要になってくるが、それだけに同会議に寄せられる期待は大きいものがある。











