宇宙港構想、沖縄の子供に夢ある宇宙の教育を

下地島空港にロケット発着基地構想、宇宙産業振興拠点に

 航空パイロット訓練地としてかつて知られていた沖縄県の下地島空港(宮古島市)が、宇宙産業振興の拠点としての第一歩を踏み出している。その旗振り役となっているのが、宇宙旅行の提供を目指すベンチャー企業「PDエアロスペース」(名古屋市)の緒川修治社長だ。沖縄の子供たちに夢のある教育をしたいと意気込んでいる。(沖縄支局・豊田 剛)


「PDエアロスペース」緒川修治社長が旗振り役に

宇宙港構想、沖縄の子供に夢ある宇宙の教育を

下地島空港

 下地島は、伊良部大橋で宮古島と結ばれている伊良部島の西側にある。下地島空港はかつて、日本航空と全日空が大型機で訓練飛行を行う場所として航空ファンの間で人気があった。ただ、両社が撤退すると沖縄県が空港の使い道を探していた。旅客ターミナルビルが整備されると、2018年からジェットスターなど国内外のLCC(格安航空)が乗り入れている。

 そこに将来、ロケットの発着基地の機能を加える「宇宙港」の機能を加える構想がある。ロケットと言えば垂直に打ち上げる鉛筆型のものをイメージするが、旅客ロケットは翼のついた「宇宙機」(スペースプレーン)。それが離着陸するのが宇宙港で、PDエアロスペースは、早くて25年にも一般客を乗せた運航を始めることを目指している。

宇宙港構想、沖縄の子供に夢ある宇宙の教育を

講演する緒川修治氏

 米国内にはすでに11の宇宙港があり、今後は23港に増える見通しだ。宇宙産業では日本は米国に後れを取っている。国内では宇宙開発は国家事業だったが、そこに民間の予算を投じて事業が行われる。そこで早くから手を挙げているのがPD社の緒川社長だ。

 PDエアロスペースは今年6月22日、下地島空港を「宇宙港」として整備するための「下地島宇宙港事業推進コンソーシアム」を立ち上げた。すでに県内外の有力企業47社が登録しており、今後は100社に広がる見通しだ。

地理的特性生かしつつ「科学技術」「産業」「教育」振興

宇宙港構想、沖縄の子供に夢ある宇宙の教育を

講演後のシンポジウムで、参加者は宇宙産業分野での県の積極的な関与を求めた=11月18日、沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンター

 緒川氏は11月、沖縄コンベンションセンター(宜野湾市)で開かれたIT見本市「リゾテック2021」の一環として行われた「国家戦略特区シンポジウム~ドローン事例を通じて今後の沖縄での活用促進を考える~」で講演。「宇宙港ができれば、沖縄から世界や宇宙にたった2時間で行くことが可能になり、人とモノの物流拠点となる」宇宙港計画について説明した。

 来年度から新たな沖縄振興計画が始まることをにらみ、PD社は「次世代航空宇宙先進諸島化構想」を沖縄県に提案している。緒川氏は、航空宇宙産業分野が持つロマン・未来・創造性をもとに、「沖縄の地理的特性を生かしつつ、『科学技術』『産業』『教育』の3分野の振興を促進する内容にした」と説明した。

 その中でも緒川氏が強調しているのは教育振興だ。「宇宙は遠い存在ではなく、自分の地域にあるもので、学べば学ぶほど奥が深く面白い」と述べ、「宇宙をテーマにした教育の場を提供することにより、未来を担う子供たち・若い世代の『ありたい姿』『なりたい姿』を実現させたい」と意気込む。

 具体的には、子供のための職業体験エンターテインメント施設である「キッザニア」を引き合いに、将来は「スペース版キッザニアのような施設」を造ることをイメージする。宇宙を教育の場に近づけ、宇宙リテラシー向上を目指すに当たり、「若い世代を中心に創造性の高い教育基盤をつくり、大人も子供の姿から学ぶことが理想的だ」とした。