石川・金沢で、未来の洋菓子職人を目指し腕競う
金沢市で9月10日、洋菓子の専門学校に通う生徒たちの技術を競う「第2回 北陸ブロック洋菓子コンテスト大会」(日本洋菓子協会連合会北陸ブロック協議会主催、金沢市文化ホール)が開かれた。金沢市や福井市、富山市など北陸3県から専門学校の学生98人が参加し、未来の洋菓子職人を目指して“お菓子の芸術”に腕を競った。審査の結果、最優秀賞の「連合会技術指導委員賞」には富山調理製菓専門学校の山本優以子さんの「お花屋さんの秘密」が選ばれた。(日下一彦)
北陸3県の洋菓子の専門学校生がコンテストで競い合う
同大会はこれまで、金沢市内の製菓専門学校を中心に30年以上開かれていたが、3年前から対象を北陸3県に広げて開催された。ところが昨年は、コロナ禍の影響で開催できず、今回が2回目となった。
大会に向かって生徒たちは「去年は大会がなくてとても残念でした。専門学校は2年で卒業なので、悔いのないようにしっかり作り上げたい」(男子学生)、「最後なので、できるところまで頑張ってやりたい」(女子学生)との声が聞かれた。生徒の作品は制作の翌日から2日間、金沢市の文化ホールで展示された。
作品はスポンジケーキの上にマジパンをかぶせてカバーして、その上に細工した人や動物、草花などを飾り付ける。マジパンとはアーモンドの粉末と砂糖を練り合わせて色を付けた素材で、さまざまな形に成形できるのが特徴。柔らかい曲線や優しい色使いが出せる。スポンジケーキの大きさは直径21㌢、高さ15㌢で、その上にマジパンの小物を飾り付ける。作品の設計図は特になく、構想を描いて、デコレートしながら微調整していくそうだ。
作品によっては、ピンセットを使って加工する細かな手作業になることも。それぞれ2年間、学んだ成果が各作品に表れている。こうした技術を身に付ければ、ケーキの上をキャンバスにして楽しく彩ることができる。
並んでいる作品を幾つか見ると、映画作りにも関心があるという男子生徒は、「映画の撮影」をテーマに現場を忠実に再現、台本を手にした監督やそれに従う役者、カメラマンなどを描いた。撮影現場の臨場感が巧みに表現されている。
また、南国が好きという女子生徒の「ハワイアン」は、クチバシが赤く、胸元が白い鳥をデフォルメし、それに白やオレンジ、赤のハイビスカスを組み合わせて色彩豊かに仕上げている。
これらの細工菓子は、素材は食べることができるが、展示すると固くなり、食用にはならない。あくまでも観賞用だ。乾燥剤を使うと、1年間は保存できるという。ちなみに制作には3~4カ月かけている。
立体性に優れていた山本優以子さんの作品が最優秀賞に
審査ではデザインや色合い、全体のバランスなどが評価の対象になった。「連合会技術指導委員賞」に選ばれた富山調理製菓専門学校の山本優以子さんの「お花屋さんの秘密」は、他の作品に比べて立体性に優っていた。土台のスポンジケーキの周囲にオレンジや黄色、白の花をちりばめ、その上の舞台にはチョコレートで作った4段の棚を置いて、そこにそれぞれ鉢植えのバラを立体的に縦に並べた。手の込んだ作品に仕上がり、それを見ながら2人の女子店員が談笑している風景を切り取った。
県洋菓子協会の富永豊彰副理事は「生徒さんは皆さん、ビックリするほど上手で、優劣を決めるのがとても難しいレベルでした。この技術を伸ばして後輩にも伝えてほしいし、就職してからも業界を盛り上げていってほしい」と語り、期待を込めていた。
また、生徒たちを指導した金沢製菓調理専門学校の佐近賢一教員は、「コロナ禍ですごく苦しい思いをしていると思いますが、一人一人が頑張ったという達成感を味わってほしい。就職してからも努力したことは結び付くでしょう」と期待している。