北海道教委、地学協働活動の学校事例を紹介

 「開かれた学校教育」が叫ばれて久しいが、ここにきて地域と学校の連携が深まっている。8月26日、北海道教育委員会(以下、道教委)は誰でも傍聴可能な「みんなの教育委員会」を開催。現在、道教委が全道的に実証事業として進めている北海道CLASSプロジェクトやコミュニティー・スクールの現状を報告した。そこでは学校が地域と連携し、生徒自ら地域課題を探求して解決を目指す地学協働活動に取り組む学校事例が紹介された。(札幌支局・湯朝 肇)


Zoomでつなぐ「みんなの教育委員会」で現状報告

北海道教委、地学協働活動の学校事例を紹介

全道の高校の取り組みを傾聴する教育委員会委員(前列)(湯朝肇撮影)

 「道教委はこれまで、教育委員会の活動や取り組みを多くの人に知っていただくために、地方に出向き会議・視察を行う移動教育委員会を実施してきましたが、新型コロナウイルス感染拡大によって困難となり、昨年に引き続きICT(情報通信技術)機器によるオンライン会議を実施することになりました」――こう語るのは、倉本博史・北海道教育長。

 毎月行われる教育委員会委員の参加する会議は公開となっており誰でも傍聴が可能。また道教委は「多くの道民に道教委の取り組みを深く理解してもらう」ことを目的に平成14年度から毎年1回、地方に出向いて教育委員会の会議・視察を行う移動教育委員会を「みんなの教育委員会」と称し実施してきた。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大で昨年と今年は札幌を拠点にZoomを使ったオンラインによる開催となった。

 この日のオンライン会議には全道14管内にある教育局や市町村にある教育委員会、高校、地域関係者が参加。午前と午後にわたって開かれ、午前中は来年度からの公立高校の配置計画や公立学校施設の耐震構造状況、北海道CLASSプロジェクトの概略など教育全般に関わる案件の報告・討論が行われ、1時間ほどで終わった。午後は東京国立博物館の銭谷眞美館長の講話に続き、事例発表として北海道のコミュニティー・スクールの状況や同プロジェクトに取り組む学校の様子などが紹介された。

生徒自らが地域課題の探求・解決を目指すプロジェクト

 北海道CLASSプロジェクトとは、①それぞれの学校と連携を持つ地域コーディネーターを配置し、自治体や産業界をつなぎ地域課題探求型のキャリア教育を推進する②プロジェクトで培った先進事例とノウハウを他の地域へも普及していく③社会教育を担う人材を育成し、連携・協働プロジェクトの創出・推進を支援する――ことを趣旨として、自治体やNPO法人などの各種団体、産業界、大学などの研究機関などとコンソーシアム(共同事業)を構築。広域かつ多様な協働活動の展開を目指すというもの。

 具体的には道内を四つの圏域に分け、12の高校を指定校としながら、それぞれの圏域内で連携を取り地域の課題を探求し解決を図っていく実証事業である。また、同プロジェクトの最大の特徴は道教委の部局内において、義務教育課、高校教育課、社会教育課の3課が連携を取り、とりわけ社会教育課が主導して進めようとしていることにある。

「活力ある地域づくりに学校と社会の連携は重要」

 今回の事例発表ではコミュニティー・スクールを推進する壮瞥小学校(胆振管内)、新得高等支援学校(十勝管内)や北海道CLASSプロジェクトを進める夕張高校(空知管内)、当別高校(石狩管内)、帯広三条高校(十勝管内)、本別高校(同)など多数の取り組みが紹介された。中でも本別高校は女子生徒2人が報告。生徒自らが同町で生産される食材(黒豆と豚肉)を活用して特産品を開発しようと試み、今年販売にこぎ着けた新商品「カレーでナイト」ができるまでの経緯を説明した。そのうちの1人は「地元JAの方やデザイナーなど地域の方々に助けられながら取り組んできました。学校とは違う社会の一面を学んだような気がします」と感想を述べた。

 文部科学省の事務次官を務めた銭谷館長は、これからの教育について「人づくり、人と人とのつながりの深さが活力ある地域づくりにつながっていく。そのためには、学校教育と社会教育の連携は極めて重要である」と訴える。質の高い学校教育と社会の要請に応える人材づくりを柱とした社会教育の密なる連携が今こそ求められている。