協力者を置き去りに、アフガン大失態の衝撃
イスラム主義組織タリバンが実権を掌握したアフガニスタンから、日本政府が退避対象としていたアフガン人2家族10人が自力で陸路、隣国パキスタンに退避したという。12日夜にまず国際協力機構(JICA)職員とその家族4人が民間機で成田空港に到着した。
アフガンには日本政府に対し出国を希望し、政府が派遣した自衛隊機に乗り込もうとした大使館やJICAなどの現地人スタッフとその家族ら約500人が残っている。
タリバンが設けた空港の検問を通るためには、アメリカ軍を通して通過者のリストを提出し、事前に許可を得なければならなかったという。だから、その500人は自分と家族の名前がタリバンに知られるリスクを知りながらも、日本を信じて出国を希望した人たちだ。その人たちを、事情はどうであれ、“置き去り”にしてしまったことは、日本の大失態だ。
1991年の湾岸戦争(前年にクウェートを侵攻・併合したイラクとアメリカ軍率いる国連の多国籍軍との間で起こり、クウェートが解放された)で、日本は憲法上の制約などから多国籍軍に対し総計130億㌦もの資金援助を行った。しかし戦後、米紙に掲載されたクウェートの参戦国への感謝広告には日本が載っておらず、日本の朝野は大きな衝撃を受けた。
その衝撃は、自衛隊海外派遣への道を開き、長くタブー視されてきた憲法改正論議に火を付ける起爆剤となった。今回の大失態は、それとは次元の異なる衝撃を与えている。
日本は自国の人間は守るが、日本に協力した外国人は守ってくれないという、とんでもない汚名、国の品格に関わる汚名を着せられかねないからである。
政府は500人の救出を諦めてはいないが、状況はさらに深刻化している。早急に国の総力を挙げて取り組むべきだ。
(武)