困窮家庭に食料や日用品を配達、女性を元気に

 生活に困っている沖縄本島全域の母親たちに食料や日用品を配達して回る女性がいる。ボランティア「女性を元気にする会」代表のゴージャス理枝さん(那覇市在住)だ。一般社団法人「沖縄命(ぬち)の電話」がこのほど、ゴージャスさんの活動を側面支援するとともに、寄付金を贈呈した。(沖縄支局・豊田 剛)


ゴージャス理枝さんが支援、コロナ禍で収入激減の世帯増

困窮家庭に食料や日用品を配達、女性を元気に

女性を元気にする会の案内

 ゴージャスさんは、エステやネイルのサロンを経営する傍ら、食料支援活動もしており、10代から60代まで約500人近くの女性たちを支援している。

 活動を始めた2015年当初は、生活に恵まれない母子にエステをワンコインまたは無償で提供する試みを始めた。来客者に話を聞く中で、食料が足りていない人が多くいることに気付いた。そこで、18年には県内最大の展示会場に4000人を集めて美容やエステの展覧会を行った際、フードバンクのチャリティーイベントを同時開催した。こうした企画を通じて多くの人とつながりができた。

 ボランティア組織「女性を元気にする会」を立ち上げフードバンクの活動を本格的に行うようになったのは2020年1月、新型コロナウイルス感染が日本で蔓延(まんえん)する直前のことだった。ボランティア団体といっても、実質、エステサロンの従業員と2人で活動している。

 コロナ禍で食料を求める人々が急増。昨年5月までは月2回の活動だったが、同6月からは週1回になった。一方で、食料を提供してくれる支援者は何十倍にも増えたという。支援者は個人から企業・団体、大手外食チェーンまで幅広い。匿名で食料を送ってくれる人もいる。また、メディアで紹介されたこともあり、県外からも支援が届いている。コロナ禍の中でありながら、支援の輪が広がっていることをゴージャスさんは実感している。

 支援を希望する側は、SNSを通じて申し込む仕組みだ。その際、住所氏名のほか、家族構成や緊急性を入力する。これを元に、寄付された弁当から米、乾麺、缶詰、粉ミルク、お菓子、トイレットペーパーまで、人数分の食料や日用品を約2週間分、段ボール箱に入れて沖縄本島の隅々まで配達している。

 ひとり親家庭を中心に支援してきたが、今年に入ってから「両親家庭を含め、そのうちのほとんどがコロナで困っている」と言う。コロナ禍で安定収入を失い、特に建設業など日雇いで働く夫の仕事が激減したという世帯が目立つという。「貯金を切り崩し、給付金も使い果たし、生活が立ち行かない世帯が増えている」とゴージャスさんは見ている。

 沖縄県は今年の春以降、緊急事態宣言が長引き、学校の休校もあった。自宅での食費が増えたり、小さい子供の面倒を見るため、仕事を休むことを余儀なくされる場合も。県内は零細企業が多く、休業支援が整っていないケースが多い。収入が減るだけでなく、精神的に追い込まれている人も多いという。

一般社団法人「沖縄命の電話」が活動支援、寄付金を贈呈

困窮家庭に食料や日用品を配達、女性を元気に

支援金を受け取ったゴージャス理枝さん(前列中央)=6月9日、沖縄県那覇市の龍門寺

 こうした中、人生の悩み相談の窓口となっている一般社団法人「沖縄 命の電話」は女性を元気にする会に支援金を贈呈した。理事で龍門寺住職の比嘉門雄山(ひがじょうゆうざん)さんは、「女性を元気にする会の活動指針に共感した。食料を届ける時に必要となる車のガソリン代や管理費に充ててほしい」と述べた。

 贈呈式で比嘉門さんは、「コロナ禍で一番影響を受けているのは女性と子供だ」と話した。父親の収入が無くなったり、減少したりした影響で、家族を養えなくなっている人が増加。家族を支えられなくなり、「死にたい」と相談してくる男性が多いという。

 「収入が減ったからといって、お金や物を与えるだけでは、問題は解決しない」と比嘉門さん。ゴージャスさんもこうした考えには共感する。食料など生活必需品の配布を通してその家族とつながり、行政や必要な支援制度につなげるため、家族構成や抱えている問題についてのヒアリングは欠かさない。

 「私と出会ったきっかけをチャンスにしてほしい」。こう語るゴージャスさんの目は輝いていた。