北海道に活力を、地域の課題解決に高校生が挑戦
人口減少が進む北海道。そんな地域に活力を与えようと高校生が自ら地域の課題を探求し自治体や産業界と連携して解決を目指す北海道CLASSプロジェクトが今年度からスタートする。北海道教育委員会が打ち出した地域の特性を生かした街づくり、人づくり、そして高校生の「学び」を通しての「絆」づくりという新たな“地学協働活動”が始まろうとしている。(札幌支局・湯朝 肇)
北海道CLASSプロジェクトが始動、道教委内の3課が連携
「北海道CLASSプロジェクトには何かの製品を作るといったような定まったゴールはありません。何よりも生徒と地域が協働で課題を見つけ、解決に向けて協働で活動する。たとえ結果が思い通りのものでなくとも、その原因や課題を見つけ、また練り直していく。CLASSプロジェクトはそんなプロジェクトです」――こう語るのは北海道教育庁生涯学習推進局社会教育課の佐々木直人主査。これまで北海道教育委員会(以下、道教委)は高等学校OPENプロジェクト(平成30年度~令和2年度)など、高校生が自ら地域の課題を見つけ、解決のための企画立案し、地域の人々と協働で活動する事業を進めてきた。
北海道CLASSプロジェクトは、そうした道教委がこれまで進めてきた事業を継承するものだが、さらに深化したものになっている。というのも、これまでの高等学校OPENプロジェクトは道教委の中の高校教育課という一部署が担当していたが、CLASSプロジェクトは社会教育課、高校教育課、義務教育課という部局を超えた3課が連携を取りながら地学協働活動を推進させる実証事業となっている。
ちなみにCLASSとは、Collaboration(地域・産業界などとの連携)、Literacy(学んだ事を生かす能力)、Adult(大人と子供の一体となった取り組み)、Student(生徒理解に基づく指導の充実)、System(仕組みづくり)の頭文字を取って作った言葉。
プロジェクトの具体的な方向性としては①それぞれの学校と連携を持つ地域コーディネーターを配置し自治体や産業界をつなぎ、地域課題探求型のキャリア教育を推進する②プロジェクトで培った先進事例とノウハウを他の地域へも普及していく③社会教育を担う人材を育成し、連携・協働プロジェクトの創出・推進を支援する――ことを趣旨とし、自治体やNPOなどの各種団体、産業界、大学等の研究機関などとコンソーシアムを構築しながら広域かつ多様な協働活動の展開を目指す。
12の指定校が連携し事業展開、原動力として高校生に期待
そこで道教委はこの事業を進めるに当たり、道内を四つの圏域に分け12の高校を指定校として決定。それぞれの圏域に推進校、連携校、サポート校を1校ずつ置きながら互いに連携を図っていくという形だ。すなわち、道北圏域は上富良野高校(推進校)、豊富高校(連携校)、そして旭川農業高校(サポート校)、道央圏域は当別高校(推進校)、夕張高校(連携校)、余市紅志高校(サポート校)、道東圏域は帯広三条高校(推進校)、本別高校(連携校)、帯広工業高校(サポート校)、道南圏域は白老東高校(推進校)、鵡川高校(連携校)、函館水産高校(サポート校)――の12校である。
これらの高校のうち、すでに地域と連携を持って協働活動を行っているところもある。サポート校はすべて高等学校OPENプロジェクトで実績を積んできており、それらを踏まえて推進校や連携校に助言を与えていく。推進・連携校では本別高校は総合的な探求の時間として「とかち創生学」を設け、研究課題ごとに外部から“コーチ”と呼ばれるアドバイザーを招いて生徒と共に課題解決の道を探ってきた。また、アイヌ民族の伝統文化が継承されている道南・白老町にある白老東高校では、地域をより深く知ることを目的として「地域学講座」をカリキュラムに置き、生徒たちが地域の歴史や民族伝統芸能に触れてきた。さらに同じ道南圏域の鵡川高校では町内の中学校と連携を取りながら地域全体を「学びの場」として課題解決探検学習を行う「むかわ学」を展開してきた。こうした取り組みを土台にしてCLASSプロジェクトでは地域との新たな協働活動を展開していこうというのである。
もっとも、新型コロナ禍という状況下、同プロジェクトは始まったばかり。道南圏域を担当する胆振教育局社会教育指導班の佐々木憲一主査は「地域コーディネーターはまだ決まっていません。決定次第、今後のスケジュールを作成していくことになります」と語る。
文科省は新しい学習指導要領の中で「社会に開かれた教育課程」の実現を掲げている。地域に根差し、共に協働活動に携わる高校生の存在は「地域活性化の原動力」として今後大いに期待される。