秋田の子供たちが丁寧に描いた多様な農業の姿

 田植えと稲刈り、キュウリの収穫、稲穂の上を飛ぶトンボ、祖父母の農作業など多様な農業の姿を描いた「農業子ども絵画コンクール作品展示会」(主催・秋田市農業大賞実行委員会)がこのほど秋田市文化会館展示ホールで開かれた。「せっかく秋田に住んでいるのだから、幼少期から農業に親しみ、絵画を描くことで理解を深めてほしい」と学校関係者は語る。(伊藤志郎)


秋田市文化会館で「農業子ども絵画コンクール作品展示会」

秋田の子供たちが多様な農業の姿を描く

秋田市文化会館展示ホールで開催された、色とりどりの作品が集まった「農業子ども絵画コンクール作品展示会」

 同展示会は、秋田市農業大賞表彰事業の一環。子供が農業に関心や理解を深めてほしいと、農業をテーマとした絵画を市内の小学生から募集し、優秀な成績を挙げた児童を毎年表彰している。応募の全作品をこの展示会で発表した。

 今年は秋田市の小学校18校から456点が集まり、最優秀賞や特別賞など10作品が入賞した。18校と言っても、1校1点のみの学校が多い中で、飯島南小は全校挙げて、外旭川小は5年生のほぼ全員の参加で両校で作品の9割を超す。

 秋田県では小学校の多くが、校内では稲バケツや野菜栽培を行い、近隣の水田を借りることができれば田植えや稲刈りに取り組むことから、それらを題材にした絵が多い。

稲作や野菜など題材多様に、丁寧な筆遣いの力作集う

秋田の子供たちが多様な農業の姿を描く

フルーツや野菜の断面をデザイン(桜小4年女児の出品作品)

秋田の子供たちが多様な農業の姿を描く

最優秀賞の「おいしいお米になれ」(桜小4年女児の出品作品)

 やはり稲作が圧倒的に目立つ。特に外旭川小学校の5年生はほとんどが田んぼをテーマとしたが、苗作りから田植え、稲刈りまでのオーソドックスなものから、トラクターでの田起こし、コンバインでの稲刈り、農薬をまくヘリコプターなどの機械類を描く作品も増えている。大平山を背景にしたものや風にそよぐ稲穂の波、米作りに欠かせない水に焦点を当てたり昔の田植え、アイガモなどユニークな視点も見られた。

 他にはキュウリやトマトなどの収穫体験、農家のおじいさんやおばあさんも描かれている。稲穂の上を飛び回るトンボやホタルが舞う光景も少数だがあった。

 最優秀賞を受賞した桜小学校4年女児の作品は、田植え機を操作する農家の人に焦点を当て、用水路を清らかな水が流れ、背景の林が水面に映える美しい田園風景を丁寧に描いた力作。ほかに秋田新幹線と水田の組み合わせや、トラクターから見たキャベツ畑の作品も受賞した。

力を入れる飯島南小、育てるところから絵を仕上げるまで

秋田の子供たちが多様な農業の姿を描く

「さつまいもとれたよ」(飯島南小1年女児の出品作品)

 ところで、全校挙げての出品となった飯島南小学校では、学年ごとに、田植え、サツマイモ掘り、ミニトマトやピーマン、カボチャ、ヘチマなどを扱った。6年生はデザイン的な取り組みで、リンゴやイチゴ、カボチャ、トウモロコシなどの野菜・フルーツの断面を版画で表現したユニークな作品が揃(そろ)う。

 同校の担当者は「育てるところから絵の作品を仕上げるまで、理科、生活、図画工作、総合的な学習の時間を横断して年間のカリキュラムに入れています。収穫した野菜を家に持ち帰って料理する児童もいます。絵画とは別に、学年によっては観察記録を付けています」と語る。観察をしているためか、「かぼちゃの葉とつる」「ぐんぐん育った大きなヘチマ」「ナスちゃん大きくなってね」などの題名から野菜を育てる思いや感動が伝わってくる。

 同校は昭和61年に開校。全校児童数が375人(15学級=令和2年5月1日)で、校章は大平山と田園地帯の稲穂を表現しており、恵まれた自然の中で穏やかに成長してほしいとの希望が込められている。秋田県学校関係緑化コンクールでもたびたび受賞している。

 来場した40代の夫婦は「6年生の娘が特別賞を受賞しました。1年の時から毎年出品し、今年は顔の表情に注意して、稲束を満面の笑顔で抱きかかえる友達を夏休みの宿題で描きました。学校では野菜の中からミニトマトを選び育てました」と話す。米粒の一粒一粒や葉っぱ、背景の点描など丁寧な筆遣いが見られた。