故人の遺志を大切に、近頃の葬儀の在り方に思う


 「友人の父」が亡くなった。大正生まれで卒寿を超えていたという。長男で喪主を務めたそうで、死去から1週間後、出社した時は、かなり疲れた様子だった。知人友人、親戚へのあいさつ、役所への届け出、残務整理に多忙だったのだろう。

 新聞の訃報欄にも「葬儀は近親者のみで済ませました。後日、お別れの会を開く予定」というのをよく見掛ける。親戚や近所の知人友人たちを式場に集めて故人を偲(しの)び送り出す一般葬から、家族だけで営む家族葬、そもそも、葬儀を行わず直接火葬する直葬、骨は宅配便で送り、“マンション形式”のお墓に入れ、永代供養するというケースまであるようだ。

 葬儀の簡素化が進むのは、①高齢化によって集まることが難しくなる、誰に知らせたらいいのか分からない②お金の問題、どれくらいの費用で葬儀を行うのか、お寺さんへのお布施はいくらぐらいか分からない③儀式やしきたりの考え方変化④明確なポリシーを持って葬儀に臨む人が増えている――というあたりが理由だろう。

 焼香の仕方、火葬後の骨拾い、納骨、墓の様式など宗教、宗派によっても作法が違う。家内の母の葬儀の時、焼香の仕方でお坊さんに叱られ、火葬後の骨拾いで「渡し箸はしちゃいけない」と義理の父に注意されたことを思い出す。

 筆者は母が19年前に肝臓がんで、父が16年前、脳梗塞で他界している。3人兄弟の真ん中のであったことから、お寺さん、親戚へのあいさつは兄が、役所への届け出は地元に住んでいる弟がやった。

 「長い人生、あまり、根を詰め過ぎないようにね」「他人に迷惑を掛けないような生き方をしなさい」と母は常日頃から言っていた。定年まで生涯平社員を通した父は「約束の時間を守れ、守れないような約束ならするな」と言っていた。形式よりも、故人を偲び遺志を大切にすることが大事だと、このごろ思う。

(和)