金沢発祥の伝統集団演技「若い力」を全国に配信
石川県金沢市では、市内の小学校で70年以上受け継がれている集団演技「若い力」をネット配信し、「コロナ禍を乗り越える元気を全国に届けよう」というプロジェクトを起こした。映像には、ご当地アイドルグループを起用し、彼女たちの健康的で明るい演技が好評だ。その広がりは市内の商店街はじめ、県域を越えて、東京都内の小学校や介護施設などでも取り入れられている。推進している金沢市スポーツ事業団では、「健康づくりに役立ってほしい」と期待している。(日下一彦)
「石川国体」で「若い力」を制作、集団演技も70年以上受け継がれる
「若い力」は昭和22年(1947年)10月30日、金澤市運動場(現・市営陸上競技場)で開催された第2回国民体育大会(石川国体)で、「スポーツの力で国民に元気を」との思いで制作され、曲に合わせた集団演技も、この時に創作された。開会式では昭和天皇御臨席の下、市内の小学6年生約4000人が、大観衆を前に躍動感あふれる演技を堂々と披露した。この時、「若い力」が初めて公に披露された。
市内の小学校では、現在も5年生になると授業で「若い力」の振り付けや歌詞を習い、6年生の全市陸上大会で披露する。これは毎年変わらず続けられ、今日まで73年の歴史となっている(今年はコロナ禍で大会は中止された)。
演技について、解説文に「直線的な手足の動きと素早い上下左右のきり返しが主たる動きで、指先まで伸びきるように神経を配り、その指先を見つめる視線、伸ばした両手のひらの向き、腕の角度までこだわる繊細かつ勇壮な踊り」とある。かなりキビキビした運動が求められ、運動能力が著しく向上する小学校高学年の児童にはピッタリだ。当初は男児だけで演じられていたが、現在は男女共の演技になっている。
これを創作したのは小学校教員だった稲場四郎さん(故人)らで、「はじめから終わりまでの全ての振り付けの動作に意味を持たせた」という。例えば、歌詞の中に「競え青春」の一節があるが、この時「空に向かって手を伸ばすポーズとし、平和な世の中や明るい未来を見据える力強さを表現しよう」とし、「平和な国の一人として生きていく。そのために心身ともに健康な人間育成の応援歌でありたい」との思いを込めたという。
児童たちの祖父母や親世代にとっては、孫や子が演じる姿を目の当たりにすると、当時の思い出がよみがえり、感想文には、「ピーンと腕をのばし青空を見上げた瞬間、涙があふれ、感無量でした。これからも継承していって欲しい」(40代の主婦)との声が寄せられている。また、「連合体育大会でその一体感を見てやりたくなり、友人を募って『大人の若い力』とネーミングして練習しました」など、各世代で親しまれてきたことが分かる。
コロナ禍を乗り越える元気を、ご当地アイドルグループが模範演技
一方、同事業団では「若い力」を全国に広めて気軽に踊り、健康になってもらおうと、プロモーションビデオを制作し、11月からユーチューブチャンネルで公開した。市内を拠点に活動する「ほくりくアイドル部」をPRガールに起用し、職員による模範演技と組み合わせ、2本立て約8分間の動画にまとめた。同アイドル部は14歳から25歳の女性16人で構成され、彼女たちの明るい笑顔とはつらつとした演技が好感を呼んでいる。リーダーを務める松井祐香里さん(24)は、「映像を見ながら体を動かして、元気で健康な体づくりのきっかけにしてもらえたら、うれしいです」と話している。
市内では、同プロジェクトに賛同している市民の台所・近江町市場をはじめ、14の商店街連盟がチームワークの良さを“売り”に元気な動画を公開し、親しまれている。
一方、県域を越えた輪も広がりつつある。東京・あきる野市の菅生学園初等学校からはホームページを見て、運動会で初めて「若い力」に取り組み、「最初は動きをそろえるのが難しかったけれど、みんなで改善点を考えて上手に出来た」との感謝のメールが届いている。また、神奈川県小田原市の介護施設からは、利用者には「若い力」が「馴染みのある曲だったので、身体がスムーズに動いた」とのうれしい知らせも届いている。問い合わせ先は金沢市スポーツ事業団(電)076(241)0882。






