地域と学校が連携して子供の成長の手助けを

北海道旭川で 「家庭教育」 をテーマにセミナーが開かれる

 「教育の原点は家庭から」と言われて久しい中、「家庭教育」をテーマに、家庭教育の重要性と支援の必要性を考えるセミナー(旭川家庭教育を支援する会主催)がこのほど、旭川市内で開かれた。地域と家庭と学校が連携し、積極的に学校教育を支えるためにも、家庭教育の充実は必須だ。同セミナーは、社会全体で家庭教育の課題に取り組み、さらに自治体による家庭教育支援条例の制定が必要だと訴えた。(札幌支局・湯朝 肇)


元教育長の上松丈夫氏、基調講演で家庭教育の重要性・支援を訴える

地域と学校が連携して子供の成長の手助けを

十勝管内中札内村元教育長の上松丈夫氏の基調講演

 「子供の成長を学校だけに任せるには限界がある。地域が担当する社会教育、家庭が担う家庭教育が車の両輪となって子供の成長に関わっていかなければ本当の教育にはならない」――こう語るのは、平成30年5月まで9年8カ月の間、十勝管内中札内村で教育長を務めた上松丈夫氏。北海道では晩秋ともいえる10月31日、道央に位置する旭川市内で家庭教育セミナーに講師として招かれた上松氏は「家庭教育を考える」をテーマに1時間半にわたって家庭教育のありようについて講演した。

 その中で上松氏は日本の家庭を取り巻く家庭教育の課題について、①若い母親が子育てに悩んでいる実情がある②子育てに「無責任な放任」や「過保護・過干渉」といった偏りがある③大人を含め子供たちの規範意識が希薄化している――などといった点を挙げ、それらを解決するキーワードとして、家庭内での「訓育と愛育のバランスの取れた子育て」「積極的な体験活動の推奨」を掲げる。また、それらを実現させるためには個々の家庭で対応するには限界があることから、「地域社会総掛かりでの教育の実現が不可欠」(同氏)と述べ、地域ぐるみの家庭教育支援の必要性を説いた。

 また、「人口減少が進む地方にとって地域の人づくりは急務となっている。どんな子供に育てるか、どんな地域をつくるのか。もう一度、大人たちが原点に立ち返って考えなければならない問題。幸い、文部科学省も地域と家庭が積極的に学校教育に参画するコミュニティースクールに本腰を入れつつある。そうした流れを捉えて家庭教育を支援することも重要だ」と上松氏は訴える。

家庭や地域に十分な教育力がない現状、家庭教育支援条例の必要性も

地域と学校が連携して子供の成長の手助けを

家庭教育の重要性と支援の必要性を考えるセミナーに参加した旭川市民ら

 この日のセミナーには、旭川市内から50人ほどの市民が参加。その中で会の代表を務める東国幹・北海道議会議員は、「現代社会にあって、本来、家庭や地域が持つ教育力は発揮されているかといえば、決してそうはなっていないのが実情。多様な価値観という美名の下に情報がちまたにあふれている。社会の変化は速いが、変わってはいけないものもある。また、子育て世代のわれわれにも守るべきものがある。社会の基本、教育の原点としての家庭を地域の力で支援できるようにしていきたい」と語る。

 同会は、今年8月に設立したばかりの新しい団体だが、会員には旭川市選出の道議会議員や旭川市議会議員、教育関係者などが多数参加。同会は同市における家庭教育の支援と推進、さらに家庭教育支援条例の制定を目指している。

 ちなみに現在、同条例を制定している全国の自治体は熊本県など8県と埼玉県志木市など6市。この日のセミナーに参加した旭川内在住の万代英樹さんは「核家族化で、しかも地域のつながりが薄くなっている昨今、一つの家庭で子育てするには大変な時代。夫婦共働きで子供を育てるとなれば苦労があります。そんな時は地域とのコミュニケーションが太ければ支えになる。そんな地域社会をつくりたいですね」と語る。同会では定期的にセミナーやシンポジウムを開催するとともに、市内の教育・社会団体との連携を強めていきたいとしている。