地元の課題解決に向けて北海道の高校生が貢献

北海道OPENプロジクト 「全道ミーテング」 で活動報告

 人口減少や少子化などで地方の過疎化が進む中、全道の高校生が自ら地域の課題を見つけ、解決に向けて取り組む北海道OPENプロジェクト「全道ミーティング」がこのほど、札幌市内で開かれた。北海道教育委員会(以下、道教委)による3年間の期間限定事業で今年度が最終年。とりわけ今年は新型コロナウイルスによる休校を強いられる中、地元企業などと連携した全道15校の取り組みが報告された。(札幌支局・湯朝 肇)


ワインづくりに着目した余市紅志高、農家で体験実習、バスツアーも

地元の課題解決に向けて北海道の高校生が貢献

北海道OPENプロジェクト「全道ミーティング」で地域の活性化のために課題解決策を披露する高校生

 「年々人口減少が続き、プロジェクトを進めていく中で地域づくりの可能性を発見し、大きな誇りを持つことができました」――こう語るのは、後志管内余市町にある余市紅志高校3年の中彌颯十さん。同校では地域活性化の試みとして町内の農業、特にワインに着目し、地域づくりに取り組んできた。10月27日に開催された全道ミーティングで報告したテーマは「北のフルーツ王国よいちワイン特区と連携した街づくり」。余市町はNHKテレビで放映された連続小説「マッサン」でも知られたウイスキー造りと観光の町だが、リンゴやサクランボなどフルーツの生産も盛んな土地柄。近年はワイン農家やワイナリーを訪れる観光客を目にするようになった。

 そこで同校ではまず、初年度に「地域を知る」をコンセプトに地元農家に出向いての体験実習、町長や町内の企業経営者を招いての講演会を開催するなど町内の課題発見に取り組んできた。その上で課題解決の目標として①バリアフリー化など誰もが安心して訪れることのできる町づくり②インバウンド客が町内をスムーズに回ることのできる多言語案内表示の設置③公共交通機関の充実化④農産物加工での高付加価値化⑤既存の観光施設とワイナリーなどとの観光連携の充実――などを掲げ、それぞれに合わせてグループ班を作り地域と連携して課題解決に向け、地域の実情を知ることを重ねてきた。

 そして最終年度の今年は、管内に拠点を置くバス会社と協力し、同校の生徒がバスガイドとなって町内を案内する「ワイナリーバスツアー」を企画・実施。「コロナ禍でツアーそのものが延期され、結局10月に実施しました。札幌市内など町外から30人近くの参加があり、とても喜ばれました」と中彌さんは語る。同校ではこのプロジェクトが終わった後も地域との連携を図る取り組みを進めている。

馬産地の静内高、離島の礼文高、知床の羅臼高など15校が活動報告

 ところで、全道ミーティングは3年前から始まった「北海道ふるさと・みらい創生事業」の一つとして、高校生が地元の地域活性化のために自ら課題を見つけ、地域と連携を取りながら製品化、事業化を目指す「OPENプロジェクト」に取り組む高校生の発表報告の場として設けられた。この日は、余市紅志高校など、全道から15校が参加。その中には、全国有数の軽種馬産地にある静内高校の生徒が取り組んだ「強い馬づくりと馬産地日高の魅力を発信」、離島で北海道最北端にある礼文高校の「礼文の魅力探訪」、道東知床半島の付け根に当たる羅臼高校の「地域資源を活用した郷土愛の醸成」など、興味深い報告が続いた。

 中でも静内高校は全国で唯一軽種馬の生産育成を行っている学校だが、今年は生徒たちが育成した軽種馬が同町内で開催された北海道市場でのサマーセールにおいて2500万円で落札され話題になったことが報告された。

参加校が4グループに分かれ交流会、道教委は“探求的な学び”を応援

地元の課題解決に向けて北海道の高校生が貢献

北海道OPENプロジェクト「全道ミーティング」で熱心な議論が交わされたグループ協議

 15校による報告が終わった後は、それぞれ四つのグループに分かれて交流会。各校の取り組みをじかに聞き、今後の各校のプロジェクトに生かすのが狙い。標茶高校3年の辻樹那さんは、「各校で積極的に地域に取り組んでいる姿を見て刺激を受けました。酪農の町・標茶の魅力を発信するためにも、地域と連携を取り知恵を絞っていきたい」と話す。

 今年度で終わる同プロジェクトについて、今後の方向性として道教委の唐川智幸・学校局高校教育課長は「高校生が地域社会の一員となっていることの自覚を持つことはとても重要で、生徒たちも地域と連携した取り組みを継続してやっていきたいと言っている。地域の課題を発見し試行錯誤しながら解決していくプロセスはまさに“探求的な学び”そのものであり、道教委としても応援していきたい」と語り、新たな事業を進めていく。