短い旅で見た日常とは違う家族の新しい顔


 日曜日に河口湖に行ってきた。子供たちが「Go To キャンペーン」を使った1泊2日の家族旅行を計画したので、それに便乗したわけだが、土曜は夜まで用事があったので、少し早めに切り上げさせてもらい、深夜に家族と合流するため、JR三鷹駅で中央特別快速「河口湖行き」最終便に飛び乗った。

 河口湖は富士五湖の一つで、山中湖に次いで大きい湖だが、訪れたのは学生時代に1度だけ。それも、富士山に御殿場口から登ったのに、下山する際に間違って吉田口に下りてしまった時の記憶しかない。結局、バスで河口湖周辺のどこかから出発したことしか覚えていないのだ。

 そんなわけで、今回、河口湖から初めて眺める富士山を楽しみにしていたが、早朝に、「富士山が見える。みんな起きろ」という幼稚園に通う孫の元気な声で起こされた。深夜の到着で分からなかったが、宿所の窓から大きく富士山が見えるのだ。

 さっそく服を着替えて散歩に出たが、朝日を背景にした山上の雲が燃え上がる炎のように雄大で圧倒された。電線や家並みが途切れる所まで歩いたが、不思議なことに近づいて行けば行くほど、富士山自体は小さく見える。北側から初めて眺めた富士山は山頂に少し雪を頂き、左斜面が斜めに少し彫り込まれて峻厳な感じがした。

 午後になって河口湖を巡る遊覧船に乗ったが、折からの雲に隠れて裾野だけしか見えなかった。裾野まで何の遮りもない富士山を見るのは、次回以降に持ち越されたわけだが、富士山のいろいろな新しい顔を見ることができたのは良かった。

 久しぶりに満喫した自然の香りの中で、電子発行の地域クーポンをめぐり食堂とのいざこざに当たる子供たちの姿や、どこへ行っても無邪気で愛嬌(あいきょう)がある孫たちの生き生きとした姿…。コロナ禍の制約はあるが、日常とは違う新しい家族の顔を見られたことが、この短い旅の何よりの収穫だった。

(武)