ブリや牡蛎などの資源を活用、地域活性化に貢献

北海道函館水産高校の生徒の取り組みに注目が集まる

 地元の資源を活用し、地域の活性化に一役買う北海道函館水産高校(北斗市、生徒数457人)の取り組みが注目を集めている。道南の函館を近隣とする町村は漁業が盛ん。近年、名産品のスルメイカが不漁となっている、一方でブリの漁獲量が増えている。そこで同校の生徒がブリを使って加工品を試作。また、これまで規格外で廃棄されていた未利用水産資源の活用研究に取り組むなど地域振興の一翼を担おうとしている。(札幌支局・湯朝 肇)


ブリや牡蛎などの資源を活用、地域活性化に貢献

函館水産高校主催の「地域みらい連携会議」で水産資源の試作・活用を報告する生徒たち

 「子供たちの魚嫌いを改善し、魚を扱う楽しさを知ってもらいたい」――こう語るのは、函館水産高校3年生の佐藤千春さん。7月16日に開かれた同校主催の「地域みらい連携会議」には水産食品科の生徒たちが、地元漁業組合や道南いさりび鉄道など同会議を構成している地元業者の委員を前に、これまでの研究開発の経過について報告した。

ブリや牡蛎の加工品を製品化、廃棄処分の未利用資源も

ブリや牡蛎などの資源を活用、地域活性化に貢献

昨年製品化したブリのオイル漬け

 水産資源の企画を担当する佐藤さんは、「昨年、製品化したブリのオイル漬け缶を発表し、メディアなどにも取り上げられて好評を博しました。今年度はブリサンドに挑戦して地元のベーカリーと連携して販売してみたいです」と語る。

 現在、水産食品科が取り組んでいる研究課題は、「ブリの食品加工」「牡蛎(かき)の加工」「ヒスタミン測定による安全性」「手のひらカレイやアカザラ貝など未利用資源の製品化」など多種にわたり、それぞれの班をつくって試作・製品化を進めている。

ブリや牡蛎などの資源を活用、地域活性化に貢献

製品化した牡蛎のふりかけ、ワインや醤油で味付けした牡蛎パック

 この日の報告では、牡蛎の食品加工に挑戦している3年生の野呂龍太郎さんが、「『生牡蛎だけがカキじゃない』をキャッチフレーズに、実入りが悪くて市場に出せない牡蛎もふりかけにして製品化してみました。また、ワインや醤油(しょうゆ)漬けにして乾燥することで美味(おい)しい食材になります。ほかに家庭でも牡蛎を安全にむくことができるように牡蛎ナイフを開発中です」と発表。

 また、ヒスタミンの研究では、3年生の中原寧々さんが「これまで北海道ではブリはそれほどメジャーな魚ではなかったので食品加工の蓄積は多くありません。ブリはアレルギー様食中毒の原因となるヒスタミンの懸念もあることから安全性に留意しなければなりません」と指摘した上で、「私たちはヒスタミン検査の精度を上げるとともに、乳ホエイを活用したニシンやブリの缶詰施策を通して魚臭低減効果を確認することができました。今後も、こうした研究を続けることで市民の魚離れを食い止め、魚食拡大につなげたい」と報告した。

3年間の『未来創生推進事業』の成果を地域振興の一翼に

 今回の取り組みの経緯について同校の亀山喜明校長は、「北海道教育委員会が進める『ふるさと未来創生推進事業』の研究指定校である当校としては、生徒たちが地域社会の一員として地域が抱える課題を共に考えながら、少しでも解決に向けて協働して成果を上げることができればという思いで取り組んでいます。3年間の限定の事業で今年が最終年度。新型コロナウイルス感染予防という問題がありますが、何とか継続して進めていきたい」と語る。

 会議に参加した上磯郡漁業協同組合の金子久氏は「手のひらカレイやアカザラ貝など沿岸で獲(と)れるが、市場に出せない未利用資源はこちらで十分に用意することができます。どんどんそれらを使って製品化してほしい」と支援を表明。

 また、同校生徒が通学で使う道南いさりび鉄道の春井満広氏も「昨年は生徒さんたちが作った缶詰を自ら車内販売してもらい完売しました。今年はコロナの影響で車内販売はできないかもしれませんが、駅での販売は可能だと思います。頑張ってもらいたい」と応援する。

 同校の3年間の取り組みは、今年10月に北海道教育委員会が主催する「ふるさと未来創生推進事業ミーティング」で報告されることになっている。