今こそ国と地方の新仕組み、「地方創生」が必要
新型コロナウイルス感染が再び拡大する中、先月22日から始まった「Gо Tо トラベル」キャンペーン。直前に東京が除外されたり、キャンセル料の方針が変わったりと混乱のうちに始まったが、その後もコロナ感染が全国的に広がり、盆休みと夏休みが重なる最盛期を迎えても、期待には程遠い状況だ。
感染対策にしろ、GoToキャンペーンにしろ、近頃、政府が打ち出す施策が思うような効果を挙げないのはなぜだろうか。
安倍晋三首相が2月末に大規模イベントの中止や全国小中高校の休校措置を発表し、その後、新型インフルエンザ特措法をコロナ仕様に改正して緊急事態宣言を発出するところまでは、国主導の施策であり、国民がその要請に従うことによって、コロナ感染の第1波を鎮静化させる効果も上がった。
ところが、国主導の全国一律の自粛措置は経済に甚大な打撃を与えた。それで、もう経済を止めることが不可能になった時点で、政府の全国一律の統制的な施策は不可能になった。地方が各自の実情に応じた施策で、感染防止と経済回復を両立させる以外に、ウィズ・コロナ時代を生き抜く道はなくなったのだ。
ところが、国と地方の関係を定める法律や制度は、従来通りの中央集権的なもので、とてもそんな実情には対応できない。政府も明確な(全国一律の)方針を打ち出せないし、自治体も権限や財源の裏打ちがないため必要な施策を推進できない。そんな中で、国民は政府や自治体の要請に応えて「新しい生活様式」を実践している。だが、国民の間に不安と不満が高まりつつあるのではないだろうか。
政府はコロナ後をにらんで新たな社会像や国家像の議論を進めているが、今機能する国の仕組みを考えなくて、コロナ後を考えましょうというのでは遅過ぎる。今こそ国と地方が共に生きる仕組み、文字通りの「地方創生」を可能にする体制づくりが必要だ。
(武)