新型コロナの影響下で、教育のあり方を考える

 社会全体が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている問題で、教育現場の課題や今後の教育のあり方を考えるシンポジウム「学びを止めるな!コロナ対策とギガスクール構想」がこのほど、沖縄県浦添市で開かれた。コロナ禍で新年度が始まるまでの子供たちの自宅での過ごし方、オンライン学習について意見が交わされた。(沖縄支局・豊田 剛)


沖縄県浦添市で開催された「学習を止めるな!」シンポ

新型コロナの影響下で、教育のあり方を考える

ソーシャルディスタンスを保ちながら入場者を大幅に制限して開催されたシンポジウム=沖縄県浦添市のてだこホール

 主催者の嵩元(たけもと)盛兼浦添市前教育長は、「コロナウイルスの第2波、3波がいつ来るか分からない中、学校現場や家庭内で、早急に課題を共有したい」と意気込みを語った。また、「今の時代、失敗する勇気があるかが問われる」と述べ、失敗を通して学ぶことを恐れないよう激励した。

 「2カ月学校が休みで最初は喜んだが、退屈だった。しかし、いざ学校が始まると面倒になってきた」

 「ゲームをしたりネット動画を見たりするのが楽しかったが、すぐに退屈になってきた。公園にも行けずストレスがたまった」

 参加した小中学生からの意見だ。小学女児の母親は「家で勉強を教えようとしても難しく、学校のありがたさを感じた」とした一方、「家族と一緒に過ごす時間が増えたことで、家族の絆は強まった」と振り返った。

 沖縄市経済文化部観光振興課の宮里大八主幹は事前に子供たちの意見を募集した。休校中の悩みとしては、「早く勉強や部活をしたい」という意見が主で、コロナの影響で外にも出掛けられず、何をしていいか分からず困っている中、「周りの人々の大切さに気付いたのではないか」と指摘。「学び続けられる環境を大人が一緒になって考える必要がある」と総括した。

GIGAスクール構想、「ICTの導入が必要」な時代に

 続いて、文部科学省が目指す教育ICT(情報通信技術)化構想の一環として小中学生に通信端末を配布する取り組みのGIGAスクール構想が議題になった。

 沖縄県マルチメディア教育研究会の宮城渉事務局長は、個に応じて家庭学習と連動したドリル学習をする学校の取り組みを説明。ただ、こうした活動を10年以上続けたが、なかなか普及しないと訴えた。その上で、①いつでも、どこでも、つながる安心感が欲しい②故障、破損、紛失などに対する教師の心理的負担の軽減③PCやルーターの貸し出し――などを教育委員会や企業に要望したいと述べた。

 キャリア教育コーディネーターの翁長有希さんは、「学びが自主化され、個別最適化されていく中で、ICTの導入が必要になる」と指摘。今後は情報社会からさらに一歩先を行く課題を解決できる人材、「チェンジメーカー」が求められるという見方を示した。コロナ禍の長期休暇については、学校が休校になっても学びが止まらなかった子供、コロナ禍で課題解決に取り組んだ子供は、それぞれどれぐらいいたのか検証する必要があると強調した。

学力は経済力問題にあらず、学校や自治体は柔軟な対処を

 コロナ禍で会場入りできなかった国立情報学研究所の新井紀子教授は、「沖縄で気になるのは学力の問題や世帯平均年収だったりするが、学力向上は経済力や塾の問題ではない」と強調した。最も重要なことは、新聞を読み取る力など「リーディングスキル」を身に付けることで、「教科書をきちんと読める力が、格差を打ち破り自分の未来をつかみ取る上でも重要だ」と訴えた。

 パネリストとして参加した浦添市の松本哲治市長は「急速に変化する時代のうねりにあって、今の子供たちに最適な教育が何かを語るのは難しい」と率直な感想を述べた。その上で、「これまでやってきたことが通用しないことを肝に銘じないと、日本の社会が時代に遅れていく」との見方を示し、「学校では校長、自治体では首長が柔軟に物事に対処しないと、子供たちが最も弊害を受ける結果になる」と警鐘を鳴らした。