「九谷焼絵皿イラストコンクール作品展」開催
石川県加賀市の石川県九谷焼美術館で、来月8日から
古九谷の名品や現代作家の作品を収集・展示している石川県九谷焼美術館では、夏休み企画として恒例の「九谷焼絵皿イラストコンクール作品展」が、来月8日から開かれる。今年で17回を数え、今回はスポーツをテーマに小学生が応募したイラストの中から、入選作を職人が絵皿に仕上げてくれる。児童自身の絵が立派な絵皿に生まれ変わり、毎回感動を呼んでいる。また、原画も展示され、作家たちの持つ高度な技術や巧みな構図が加味されて、見どころのある作品になっている。(日下一彦)
小学生の入選作が職人により九谷焼の絵皿に生まれ変わる
同館が5月31日まで募集したところ、加賀市を中心に隣県の福井県あわら市や富山県富山市など全国から1115点の作品が寄せられた。期間中、コロナ禍の影響で小学校の休校と重なり、応募は昨年の半分余りだった。
審査は6月9日に行われ、同館の運営などを支援する「NPО法人さろんど九谷」の古田章子代表、九谷焼作家の弦巻玲子さん、そして同館の武腰潤館長の3人が8点の入選作を選んだ。その中から市長賞1点と特別賞1点、優秀賞6点が決まった。加賀市長賞には富山市中央小学校5年の都築摩浩(まひろ)さんの「わたし、泳ぐ!」、特別賞は加賀市作見小学校5年の河上茉白(ましろ)さんの「one team」が受賞した。
都築さんの作品は波しぶきを上げながら力泳するスイマーがたくましく描かれ、河上さんは、昨年日本中を沸かせたラグビーワールドカップで、相手選手の腰に果敢にタックルするラガーマンをリアルに描いた。都築さんのスイマーは、かき分ける波を緑と紫、黄で見事に表現している。通常、波は水色で描くところだが、同展では九谷焼にちなみ、輪郭線の黒の他は「九谷五彩の赤、緑、紫、紺青、黄」の五色と決まっているからだ。
学芸員の神尾千絵さんによれば、「水色のないところが一つのハードルです。そこに独創性、創造力を発揮してもらいたい。そうすることで、古九谷などの作品を見る時、当時の人たちが豊かな自然を五色だけで描いているところに、九谷焼の見どころが見えてくるのではないでしょうか」と説明している。
“絵付け作家”が高度な技術を加味、絵皿と共に原画も展示
一方、絵付けする作家にも苦労があるという。13人の作家が手分けして、日常の仕事の合間を縫って制作する。イラストはハガキ大で描かれ、それを丸い絵皿に仕上げるわけだから、構図は「□から〇」になり、イラストにはない余白が生じることになる。作家たちはその余白を生かすべく、得意とする技法や模様など駆使して仕上げる。展示では絵皿と共に原画も展示されるので、作家たちの工夫の跡が見て取れる。「絵皿は子供たちと作家さんたちとのコラボ作品です」と神尾さん。
また、同展には加賀市と友好都市協定を結んでいる台湾・台南市の小学生の作品も展示される。5年前から参加し、今年は932点(昨年は860点)の応募があり、台南市長賞1点、優秀賞7点の入賞作が決まった。市長賞は新進國小学校5年の黄齢嬅さんの「転げ回ろう!サッカー」で、これら8点も絵皿になる。「台湾ではこのコンクールのため、絵を習っている子供たちもいると聞いています」(神尾さん)。黄さんの作品はドリブルする足の間から、遠近法でゴールキーパーが描かれ、奥行きのある作品に仕上がっている。
同展は8月8日(土)~9月27日(日)まで(月曜は休館、入場無料)。両国合わせて216点が展示される。最終日は午後3時から表彰式が行われ、副賞として絵皿が手渡される。開館時間は午前9時から午後5時まで。








