UAE探査機 中東初の火星の夢打ち上げる


 中東諸国で初となるアラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機「HOPE」(アルアマル)の打ち上げが、鹿児島県・種子島宇宙センターからH2Aロケットによって行われ、見事に成功した。来年に建国50周年を迎えるUAEの記念すべき宇宙事業であり、火星への夢を託した約5億キロの旅の出発に互恵的な協力を果たせたことは喜ばしいことだ。

世界平均上回る成功率

 20日午前6時58分、HOPEを搭載したH2Aロケット42号機は、梅雨の晴れ間の種子島沖上空を白い噴煙をなびかせながら舞い上がって行き、およそ1時間後、火星に向かう軌道に予定通り投入された。

 打ち上げはわが国やUAEに中継された。収束の見えない新型コロナウイルス感染、九州地方を襲った記録的な大雨や長梅雨など暗い世相を吹き払うような歓声は、中東域内でも決して大きくない人口900万人の国であり、アラブ人としての誇りを懸けて挑んだUAE側の感動によるところが大きかったと言えよう。

 また、三菱重工のH2Aロケットは7号機から連続して打ち上げを成功させており、H2Bロケットと合わせて打ち上げ成功率98%と、世界平均の95%を上回る。2018年にもH2A40号機によってUAEの地球観測衛星「ハリーファサット」の打ち上げを成功させている。ロケット技術の信頼で国際市場にさらに地歩を固めることが期待される。

 新型コロナ感染対策の中で、打ち上げ成功の後にオンライン記者会見したUAEのサラ・アルアミリ先進技術担当相は「新型コロナ流行の困難な時期、支援によって打ち上げることができたことを感謝したい」と、日本側の関係者に謝辞を述べた。

 平和的な宇宙開発でUAEが快挙を遂げることは、宗派争い、テロや内戦、難民問題などに揺れるアラブ社会に前向きなメッセージを与えるものだ。

 産油国のUAEは金融、観光にも力を入れてきたが、宇宙開発への参入は09年に地球観測衛星「ドバイサット1」を打ち上げたのが最初だ。

 しかし、米国、ロシア、中国、欧州諸国が宇宙開発で先行する中で、14年にHOPE計画を立ち上げ、未来の火星移住を構想するなど非常に意欲的な取り組みをしている。

 同計画には約2億㌦の予算が充てられ、三菱重工はUAEのドバイ政府宇宙機関「ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター」(MBRSC)からHOPEの打ち上げを受注した。

 HOPEはMBRSCが米国の協力を受けて製造し、高解像度の観測カメラ、紫外線と赤外線の観測装置を搭載しており、火星の全球の大気の下層、中層などを観測する気象衛星の役割を果たす予定だ。

日本は宇宙開発に貢献を

 米国ではスペースX社が世界初の商用ロケットを打ち上げ、国際宇宙ステーション(ISS)に飛行士と物資を輸送した。今後の宇宙開発では先進国の技術と企業、途上国の資金が結び付く国際開発が主流になっていく趨勢(すうせい)にある。わが国の参与と貢献を期待したい。