沖縄の大学・高校生の有志が県に緊急支援を要請

 新型コロナウイルスの影響で、勉学や生活資金で悩みを抱える学生の声を集めた「沖縄県内学生への緊急支援を求める学生有志の会」が5月上旬に立ち上げられ、沖縄県と県教育委員会に対し、経済的な影響を受けた学生への支援金給付などを求める要請書を提出した。(沖縄支局・豊田 剛)


新型コロナ響の影響でアルバイトを失い、収入が途絶える

 「アルバイトしている塾も3月、急に臨時閉校し、収入がない。仕方なく別のアルバイトを兼業で始めたが、そのお店も臨時休業しており、収入を得られない」(大学3年生)

 「家庭の経済的事情で進学をあきらめた。入っていた仕事が休業になってしまったので、別のアルバイトを増やし、掛け持ちしているが、経済的に困窮している」(18歳男性)

 こうした学生の困窮状態を目の当たりにし、学生有志の会が結成された。琉球大(西原町)、沖縄大(那覇市)、沖縄国際大(宜野湾市)、名桜大(名護市)の学生と院生だ。公立高校の生徒も加わって、琉球大学大学院の小林倫子さんが共同代表を務めている。

「学業の継続が厳しい」と訴え、進学をあきらめたケースも

 先月15日、有志の会のメンバーは、「新型コロナウイルスの影響でアルバイトが減り生活費の収入が途絶えたことで学業の継続も厳しくなった」として、生活費支援金の給付や学費援助、学習環境の整備などを県に求めた。要請書を受け取った県と県教委は「切実な声をしっかりと受け取った。県として各機関と相談し対応していきたい」と回答した。

 学生有志の会は3月から、15歳以上の学生らを対象にアンケートを実施してきた。回答した1383人のうち7割がアルバイトなどの収入が減り、金銭面の不安を感じていることが浮き彫りとなった。回答の中には、「家庭の経済的事情で進学をあきらめた」という回答も複数あった。

 県への要請では、①光熱費の補填(ほてん)を含めた生活費支援金の給付②授業料免除などの学費援助③教科書代など教育機関で必要な費用の援助④通信機器の貸し出しなど、通信・学習環境整備への支援⑤進路に関する不安解消の取り組み⑥心のケア⑦相談窓口の開設と持続的な支援体制の構築⑧当事者の声に合わせた緊急支援と持続的な支援を国に申し入れる――ことを求めた。

 要望書を提出した琉球大大学院の小林倫子さんは「沖縄の将来を担う学生に寄り添い、社会全体で若い力を育てる社会を実現してほしい」と訴えた。

沖縄の大学・高校生の有志が県に緊急支援を要請

休校中で閑散としている沖縄国際大学=5月25日、沖縄県宜野湾市

 こうした中、沖縄の大学は、独自の取り組みを進めている。沖縄国際大学と沖縄大学はそれぞれ、学生への修学支援として在学中の全学生を対象に1人当たり一律5万円を支給することを決めた。また、沖縄国際大学は経済的に厳しい学生に10万円を給付する独自の奨学金を新たに設置した。

中高生対象のアンケートで「勉強の遅れ」に不安の声

 また、中高一貫の球陽高校(沖縄市)の生徒は中高生を対象にアンケートを実施し1110件の回答を得た。不安に感じていることは「勉強の遅れ」が最も多く、「修学旅行など行事がなくなる」「高校や大学の受験が心配」と続いた。「塾にも行けない。推薦に間に合わせる検定が中止になった。部活の大会も中止になった。全学年1年やり直してほしい」という高校3年生ならではの意見が目立った。

 県教育委員会は、長期の休校で遅れた授業時間を確保するため、県立高校などの夏休みを、通常7月20日から8月末のところを、8月1~10日にまで短縮するよう提案している。それでも授業が追い付かない見通しであることから、土曜授業を計画している高校もある。

 アンケートでは、土曜登校で必要となる交通費の負担を心配する意見が多かったという。玉城デニー知事は2018年9月の知事選で学生のバス通学費無料化を公約に掲げた。ところが、いまだ実現していない。高校生については、住民税非課税世帯と児童扶養手当支給世帯を対象に今年10月から無料制度を始める予定だが、中学生は今年度の実施は事実上見送っている。有志の会は、「全ての学生にバス通学無料化するなど急速な対策を取ってほしい」と主張した。