富山県ゆかりの郷土の先賢20人の肖像画を展示
富山市の県教育記念館で企画展、郷土を見直すきっかけに
富山市の県教育記念館では、企画展「肖像画で見る郷土の先賢展 世界の架け橋~富山から日本・世界を繋いだ人々~」が開催されている。米国で「アドレナリン」の抽出に取り組んだ世界的化学者の高峰譲吉、1964(昭和39)年の東京五輪開催時に外国人向けのホテル不足を解消するため、ホテルニューオータニを建設した実業家の大谷米太郎など、富山県ゆかりの先賢20人の肖像画が並び、それぞれの業績が紹介されている。「私たちの故郷にこんな素晴らしい業績を築いた人たちを初めて知った」という来館者も多く、改めて郷土を見直すきっかけになっている。(日下一彦)
化学者・高峰譲吉や実業家・大谷米太郎など業績を紹介
富山駅から徒歩で約7分、富山県教育記念館1階フロアに、20人の肖像画がズラリと並んでいる。描いたのは肖像画界の第一人者・馬堀法眼喜孝画伯(1907~)=横須賀市在住。どの表情も柔らかいタッチで描かれ、親しみにあふれている。同画伯は御真影(ごしんえい)の集大成として人気の高い「日本國歴代天皇御真影図」で知られ、23歳で皇室の出入りを許され、比叡山延暦寺で釈迦如来などの肖像を描いて同寺大講堂に掲額されている。「法眼」は絵師の敬称の一つ。
同展には前述の高峰譲吉(1854~1922)、読売新聞社や日本テレビ放送網の社長として広く知られた正力松太郎(1885~1969)、ホテルニューオータニを開業した大谷米太郎(1881~1968)、セメントで起業し、一代で浅野財閥を築いた浅野總一郎(1848~1930)、浅野と深い親交があり、「金融王」と呼ばれ、安田財閥を築いた安田善次郎(1838~1921)ら、日本の近代国家の黎明(れいめい)期に、地元で生まれ、日本と世界を力強く牽引(けんいん)した先賢たちだ。
産業界からはテレビアンテナの発明者・宇田新太郎(1896~1976)、世界初の大型テレビ公開の実験者・川原田政太郎(1890~1983)が取り上げられている。宇田はインド国立物理研究所のエレクトロニクス部長としても活躍し、晩年はレーザー光線の研究にも携わった。川原田は大学野球の試合を世界で最初に屋外で実況中継し、テレビ社会の基礎づくりに尽力した。
文化・芸術分野では、インドの自然や芸術に魅せられた日本画家の石崎光瑶(1884~1947)、浮世絵を世界に紹介し、ゴッホやゴーギャンら印象派の画家たちに多大な影響を与えた林忠正(1853~1906)、女性ではナイチンゲール記章を受章した大野ヨリ(1884~1957)、高等教育の普及に努めた馬場はる(1886~1971)、カナダ出身で宣教師として来日し、幼児教育の先駆者となった亜武巣(あむす)マーガレット(1877~1960)らが並んでいる。
主催した富山県ひとづくり財団(公益財団法人)では、「先賢の生き方に触れて学ぶことは、先の見えない今を生きる現代人にとって力強い指針となり、未来を担う子供たちには将来の自分の夢や目標につなげ、たくましくチャレンジするモデルになるのではないか」と話している。
同財団では今回展示の20人の他に、政治・経済・教育・文化・スポーツなどの各分野で名を馳(は)せた合計145人の先賢を調査・研究している。その資料も3階の「郷土先賢室」に展示されている。
同展は入場無料、期間は5月24日(日)まで(新型コロナウイルス感染拡大防止のため、4月18日~5月6日まで展示休止)。問い合わせは(電)076(444)2000。