重要性が高まる、地域と連携し開かれた学校教育
北海道教育大、「拓北・あいの里教育フォーラム」を開く
地域に開かれた学校づくりが叫ばれて久しいが、子供の安全や地域おこし、さらに防災などの観点から学校教育と地域の連携の重要性は以前にも増して高まっている。そうした中で北海道教育大学札幌校は地域と連携し20年近くにわたってフォーラムを開催。「拓北・あいの里教育フォーラム2020」を開いて地域住民との交流を深めた。(札幌支局・湯朝 肇)
「あたらしい教育」テーマに討論、地域住民と交流深める
「従来の“学び”の支援は、子供たちにとって対立と排他的な競争の中で社会的な孤立をもたらすものだった。しかし、これからは学校と地域・家庭がパートナーシップを取りながら、子供たちが創造的で対話的な“学び”を通して心の豊かさと幸福を感じることのできる教育が求められている」-2月16日、札幌市北区のあいの里地区センターで開かれた「拓北・あいの里教育フォーラム2020」で学校臨床心理を専門とする北海道教育大学大学院教育学研究科の庄井良信教授は「語り合いから深い学びへ」と題した基調講演で、こう語り、社会に開かれた学校教育の在り方について持論を展開した。
とりわけ、学力については「(受験勉強のように)学べば学ぶほど疎外と焦燥感を持つというものではなく、学校は学べば学ぶほど安心と希望が感じられるような学びの場となるべきだ」と学力向上に対する捉え方の見直しが必要だと訴える。さらに、子供たちが学校や地域で安心と希望が持てるようになるその分岐点は、家族で基本的な信頼関係が構築されていること、子供たちの自己肯定感が育まれていることを挙げ、家族の中での対話を通して幸福感を味わえるような環境づくりの重要性を説いた。
同フォーラムは北海道教育大学札幌校と札幌市北区にある「拓北・あいの里地区教育連携懇談会の主催で、この日は同地区の住民や、学生、教員など約70人が参加。平成12(2000)年から始まり、平成19年に一時中断していたものの平成21年から再開し、今年で19回目を迎える。
今年は「あたらしい教育をめざして~学校教育と地域のこれまでとこれから」をテーマに、中島大輔・北海道教育大学附属札幌小学校教諭、西本有希・同校教諭、日野澤佳史・あいの里西小学校教諭、丸田貴久・拓北小学校PTA会長がパネリストとなりディスカッションを繰り広げた。
中島教諭は学校で担当しているプログラミング教育を紹介。小学校の新しい学習指導要領では2020年からプログラミング教育が必修化されるが、「単にパソコンやタブレットに入力するといったことよりも、“考えてやってみる”という動作を大切にしています。入力間違いで思い通りにならない。それはどこに原因があるのか。低学年ではピタゴラ装置などを使って、どんなふうにすれば楽しくなるか、など考えるような授業。トライ・アンド・エラーで失敗から学ぶことを重点に置いて取り組んでいます」と説明する。
一方、日野澤教諭は、総合的な学習の時間を使って子供たちと地域との関わりを紹介。小学校3年生は地域で毎年行われる「あいの里あいあい祭り」に参加するための活動。また4年生は「防災に備えて」をテーマに町内の防災地図の作成や防災施設の確認、さらに消防士を呼んで防災訓練の実施などを説明した。
もっとも、参加者の中からは「小学校で新年度からプログラミング教育や英語が必修化されるが、それよりも日本の言葉である国語の教育に重点を置くべきではないか」といった声や、「防災においても、2年前の胆振東部地震では避難情報の提供が不十分だった。学校が避難場所になると思うが、きめ細かい情報の発信が必要だ」といった意見が相次いだ。
今回のフォーラムに関して、拓北・あいの里地区連合町内会の近藤幸一会長は、「地域の方々は学校で今どんなことをしているのかを知る機会がない。今回は、地域の小中学校や高等支援学校がポスターを作って取り組みを紹介していただいた。地域と学校の連携を深めるには今後も続けていきたい」と話す。
拓北・あいの里は石狩市に隣接した閑静な住宅街で、北海道教育大学や北海道医療大学のほかに高校、高等支援学校、小中学校がある学園都市になっている。こうした教育機関と地域が連携を取りながら街づくりを進めるならば文化の薫りのする地域をつくることができるだろう。