広がるJリーグ「ベガルタ仙台」のエコ活動
ごみの分別で減量化に取り組む、一般のイベントにも拡大
宮城県仙台市をホームタウンとするプロサッカーチーム・ベガルタ仙台は、ごみの分別を通じて減量化に積極的に取り組んできた。他のJリーグチームにとどまらず、プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスなど他のスポーツ団体にも影響を与えている。仙台市では一般団体へのエコステーションキットの無料貸し出しを行い、一般のイベントにも拡大。ごみ減量・リサイクルを支援している。ボランティア育成や子供のエコ教育にもつながる。(伊藤志郎)
楽天イーグルスなど、サッカー以外のスポーツ団体も採用
ボランティアの育成や子供のエコ教育にもつながる
ベガルタ仙台のホーム・仙台スタジアム(2003年当時)では、観客が持参した飲食品の包みや容器などをスタジアムで捨て帰る。そのため、1試合で500袋のごみが発生し処理問題が深刻さを増していた。その処理費用は毎回約10万円。ボランティアの労力だけでは処理が追い付かない状態になっていた。
2003年、ベガルタ仙台はスタジアムでのごみ減量作戦を開始した。「仙台スタジアムを日本一きれいなスタジアムに!」を目標に、チームスタッフ、ボランティア、警備員が、弁当の容器とフタ、食べ残し、梅干しの種、ストロー、紙パック、割り箸など10種類に分別したところ、“ごみのカサ”が5分の1に激減した。
この成果に、ごみを分別した、裏方さんたちは俄然(がぜん)やる気を起こした。次に取った行動は、ごみ内容の分析。毎試合約8000個の紙コップが消費されていた。ばらばらだと1袋100個が限界だが、きちんと重ねると700個入ることが分かった。捨てる観客に壁際にコップの種類ごとに重ねてもらうことにした。回収した紙コップはリサイクルしトイレットペーパーとしてスタジアムに戻され、使用される。
チームの運営会社(株式会社ベガルタ仙台)は仙台市の環境社会実験に応募し採用され、その予算でボードを使い活動を紹介した。壁面には「エコステーション」の横断幕を張り、分別袋を設置した。
サポーター向けには、チアリーダーが休憩時間に会場を周回し「プレイは華麗に! スタジアムは綺麗に!」「ごみと失点はゼロがいい?」などの横断幕を持ち広報。エコ活動を紹介する“手作り通信”には、前回行った取り組みが、どれくらい効果があったか、エコプロジェクトの内容を載せて配った。そのほか、地元放送局でも放送。お客さんから「見ているよ! 頑張ってね!」との声が関係者の元に届けられた。
当初「プロスポーツ会場で、ごみ減量を呼び掛けるなんてあり得ない!」「観客は観戦にやって来る。ごみの減量や分別? 協力してくれるわけがない!」という声が大半だった。しかし実施してみると1シーズンで30%のごみ減量に成功。総処理費用も、前年の180万円弱から43万円減った。サッカースタジアムでのごみの減量は全国初の快挙となり、「仙台方式」と呼ばれるようになった。Jリーグの本部で事例発表も行った。
この動きは、夏休みの子供向けエコ講座に発展。エコステーションの前でごみ分別を呼び掛けた。子供は自分の家でも率先してごみ分別に取り組むようになる。
ベガルタ仙台での取り組みは、東北楽天ゴールデンイーグルスでも採用。05年の初戦から活動を開始、宮城県仙台市にある「楽天生命パーク宮城球場」の7カ所のエコステーションで10種類を分別。ベガルタのごみ分別経験者も参加し、飲食包材の統一も図った。ごみの分別回収、リサイクルに取り組んだ結果、14年度は年間30・8㌧の二酸化炭素を削減。杉の木の二酸化炭素吸収量に換算すると約2200本分に相当する。また05年に仙台市体育館で開かれたプロバスケットボールチーム仙台89ERSの試合でも、長机にごみ袋を張り付けた。
これら一連の活動は、スポーツチームとリサイクル系企業、NPOに加えて観客、行政を交えた協力体制が構築され、さらに子供のエコ教育・ボランティアの育成にもつながっている。プロスポーツの場が、横断幕や映像、エコグッズの開発、プログラムへのコラム掲載を通しエコ活動の普及啓発になることを証明したのだった。
仙台市ではさらにこの輪を広げていく。19年秋の仙台オクトーバーフェスト(杜の都のビールまつり)、仙台七夕花火祭にもエコステーションが設置された。
仙台市家庭ごみ減量課は一般の団体にも支援の輪を広げている。エコイベントの実施に欠かせない「ごみ分別ステーションキット」を無料で貸し出す。Jリーグでは新潟、横浜、大阪と全国に拡大している。