非常時のネット情報は要注意、SNSでデマ拡散


 もう2週間以上も前になるが、天皇誕生日の朝、妻は休日なのに早々に朝食を済ませ、8時には近くのドラッグストアに向かった。平日では手に入らないマスクを買うために列に並ぶのだという。

 筆者も急(せ)かされたが、時事番組を見て8時半すぎに自宅を出たら既に長蛇の列。駐車場をはみ出し店舗横の日陰の道路まで伸びた列の最後尾に並んではみたが、案の定、9時の開店間もなくマスクは売り切れ、妻から大目玉を食らってしまった。

 その時に列の前の方から「オイルショックの時はトイレットペーパーを買うために並んだんだって…」という声が聞こえた。確かに1973年の第1次オイルショックの時に、大都市を中心にトイレ紙の買いだめが起こり大騒動になったことを覚えている。

 それで、その時は「あっ、懐かしいことを言うな」という気持ちで聞き流したが、数日して、今度は「トイレットペーパーがなくなっている」というメールが妻から届いた。LINEを通して品薄情報がどんどん入ってくるというのだ。半信半疑ながら、帰宅途中にスーパーに立ち寄ると、確かにトイレ紙コーナーには何もなかった。

 「マスクの次にトイレ紙が品薄になる」というデマがインターネット交流サイト(SNS)などで拡散したためだという。新型コロナ感染がいつ終息するか分からない中で、マスク不足に嫌気が差した頃合いに「次は…」と言われ、飛び付いたのだろうが、本当に必要な人にとってはたまったものではない。

 SNSの威力は本当に大したものだ。全くのデマでも、複数の知り合いから「~なんだって」と言われると、本当かなと思ってしまう。今回もデマがネットで拡散して本当に品薄になり、慎重な人まで動いて大騒動になった。開いた口に戸は立たぬというが、SNSという拡散器を通した非常時のネット情報は要注意だ。

(武)