高校生初の「もったいない大賞」農水大臣賞受賞
石川県立翠星高校、柚子の廃棄果皮有効利用が評価される
第7回「食品産業もったいない大賞」(公益財団法人食品等流通合理化促進機構)の農林水産大臣賞を、石川県の県立翠星(すいせい)高校(白山市)食品科学研究会が受賞した。高校生の受賞は初めてで、居並ぶ大手企業を抑えての快挙だった。卒業した先輩たちの跡を地道に受け継ぎ、9年間かけて取り組んできた「廃棄果皮0(ゼロ)システム」の構築と普及が高く評価された。(日下一彦)
「廃棄果皮0システム」の構築で大手企業を抑えて快挙
「地域の農業に貢献」と胸を張る食品科学研究会の生徒
このシステムは、かんきつ類の柚子(ゆず)についての取り組みで、通常果汁を搾った後の果皮は捨てられている。それをピール煮(砂糖煮)に加工し、お菓子の材料にしたり、アロマオイルを抽出・商品化することで付加価値を生み出した。さらに抽出後の残った果皮を炭にして畑に還元することで、循環型農業の実現につなげた。しかも、ピール煮製造やアロマオイル抽出を障がい者就労施設に委託することで、その支援も可能にしている。
この一連の流れを彼らが先鞭(せんべん)をつけ、生産者が実践して所得向上が見込まれ、地域の活性化にもつながるということだ。同時に、果皮を活用して6次産業化に取り組みたい生産者への技術指導にもなっている。現在、地元の金沢ゆず生産地の他、県内のかんきつ類を生産する他地域や埼玉県、愛媛県でも導入され、徐々に広がりを見せている。
同研究会は1年生から3年生まで11人で、安川三和教諭が指導している。システム構築の経緯を見ると、2011年にJA金沢市の柚子部会の生産者が、果皮の処分に困っていることを聞き付け、「ゆずマーマレード」を製造・販売したことがきっかけだった。
当時、果皮のうち50%は食品加工会社に販売されていたが、残りは廃棄されていた。ところがよく調べてみると、残りの30%は可食部で、20%は加工すれば食べられることが分かった。そこで、廃棄されていた50%の果皮を全て活用することで、柚子農家の収入増と後継者育成を目指した、同プロジェクトがスタートした。まず、「ゆずマーマレード」を開発し、2017年には柚子部会で製造・販売し、飲食業者らに納品できるようになった。
その間、2013年に果皮を砂糖で煮たピール煮を開発。こちらはマーマレードよりも砂糖の含有量が低いが、製菓材料に活用されることになった。開発した商品は、その都度日本食品分析センターや石川県立大学で安全性を調べてもらっている。
さらに、2017年には「そのまま食べるピール煮」、翌年には地元企業と共同で、ピール煮を使った「金沢ゆず大福」や「国造(こくぞう)ゆず餡(あめ)団子」を商品化し、これらの和菓子は白山市や金沢市などの和菓子店に並んでいる。
取り組みは食品開発だけにとどまらず、アロマオイルの抽出にも成功した。アロマデザイナーと共同で、「金沢ゆずキャンドル」や「金沢ゆず石鹸」の開発まで進んだ。さらに、和紙製造会社と共同で「ゆず和紙」も作り上げた。こちらは和紙が淡い黄色に仕上がり、現在名刺や表彰状などに利用されている。
リーダーの太田風音さん(3年)は、「システムを構築するのは簡単ですが、それを実際に稼働させて収益を得るのが大変だったようです」と語り、先輩たちの苦労を思いやった。「生産者の方々は利益が確保できる見通しが立たないとやれません。先輩たちは企業と相談しながら、自分たちで販路を開拓するところまでやって、ようやく皆さんが動きだしました。そこまできちっと整えることが大切だと先輩たちから聴いています」
さらに生産者と培った交流は、今の生徒たちには貴重な体験となっているようだ。「これまで農業について詳しくなかったが、高校生という立場でも地域の農業に貢献できることがたくさんあることを学びました。例えば、高校生ならではのやる気や若い元気な力を発揮することで、生産者の方々に刺激を与えることができます。それは若い私たちだからこそやれることです」と胸を張ってみせた。太田さんに続く後輩たちも、「柚子だけでなく、かんきつ類全般に広げたいし、台風などで落下した果実の再利用にも取り組んでいきたい」と目を輝かせている。







