非大卒人材にも社会的な支援を
「スクール・トゥ・ワーク」が就職問題についてセミナー
中卒や高卒といった非大卒人材に対するキャリア教育事業などを行う一般社団法人スクール・トゥ・ワーク(=所在地:東京都千代田区、代表理事:古屋星斗)は4日、非大卒人材の就職問題についてのセミナーを千代田区立日比谷図書文化館で開いた。(辻本奈緒子)
「高卒採用にメリットも」
登壇した大阪大学の吉川徹教授は「大学無償化や奨学金といった大学生向けの支援が話題だが、中卒・高卒で就職する若者は支援対象となっていない」と指摘。高卒と大卒における賃金格差は、男性に限っても20代では月収3万円程度だが、50代前半では20万円近い差になっているなどのデータを紹介した上で「稼得力の最も低い非大卒女性の賃金が上昇すれば、子供の貧困などの抑止にもつながるのではないか」と訴えた。
文部科学省と厚生労働省が10日に公表した高校生の就職活動や高卒採用に関する報告書によると、高校卒業後に大学や専門学校に進学せず就職を選ぶ若者の就職活動では、応募を一社のみに限定する「一人一社制」が多くの地域で慣習化しており、学校推薦などを利用して内定を得やすいメリットがある一方、選択肢が狭まることで高校生本人の主体性を制限しかねないとの指摘もある。
そうした現状を踏まえ、吉川教授は中・高卒の人材を“Lightly Educated Guys”(軽学歴者)の頭文字を取って「レッグス」と表現。高校生の進路選択については「大学進学は人生の賭けであることを理解すべきだ」とする一方、「将来の方向性に迷いがあるなら非大卒を選ぶべきではない。早い段階での計画が必要だ」と主張した。さらに、「大学生が学生生活を送る4年の間、高卒者が積み重ねたキャリアを正当に評価すべきだ」とし、大卒と非大卒の人材が互いを尊重し、社会の両翼として共生することを提案した。
セミナーの後半では、社会で活躍している非大卒の若者と吉川教授によるパネルディスカッションが行われた。採用コンサルティングを行う企業でキャリアカウンセラーを務める森川剛さん(25)は、「高校生の就活では職業選択の機会が不十分で、3年以内の離職率が高い。地元企業を退職したことで卒業校から苦情を言われた例もある」と実情を紹介した。
また大卒者に対してどのように思っているかという質問に対し、高校生の新卒採用支援を行う企業で営業部主任を務める渡邊健斗さん(21)は「奨学金を借りてでも進学するのは素直にすごいなと思う。ただ、営業では10代ということだけでも武器になり、高卒であるメリットも感じた」と語った。






