道徳の教科化から小学校で2年、中学校で1年


 道徳が教科化され「特別の教科道徳」となって間もなく小学校で2年、中学校で1年になる。

 筆者の子供が中学を卒業した後に始まったため、授業参観の機会はなかったが、現職の教師から道徳授業について話を聞くことがある。まだ試行錯誤している教師も多いようだ。先日聞いた教師は、学習指導要領に示された「内容項目の四つの視点」のうち特に「主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること」を意識して教えているということだった(他の三つは「主として自分自身に関すること」「主として人との関わりに関すること」「主として集団や社会との関わりに関すること」)。

 教科化された道徳で求められているのは、大切な価値を理解し、自分の問題として考えて、具体的に行動、実践できるようになることだ。教師は子供たちに考えさせ、対話を促しながら、道徳的心情や実践意欲を育てる授業を行わなければならない。そのためには道徳専門教員の養成が不可欠だという専門家の指摘がある。そのためには現在の教員養成課程だけでは不十分で、学問としての道徳の研究や授業研究を深めた教員養成課程が必要だという。

 また、具体的な実践が学校の中だけで終わるのでは意味がない。家庭や地域でも同じように行動できることが大切だ。

 この点で、文部科学省のウェブサイトでアメリカの道徳教育として紹介されている人格教育(character education)は、学校と家庭と地域社会が連携して行われることが大きな特徴だ。例えば学校で「思いやり」という価値を子供たちに身に付けさせるように決めたら、家庭と地域でもさまざまなやり方でその価値を伝え、行動に結び付けられるような環境をつくるのである。

 人格教育に限らないが、学校と家庭・地域の連携は教育では常に重要視されている。特に今後の道徳教育にとって、3者の連携は必要ではないか。

(誠)