スポーツ・文化・観光、3庁連携で海外に発信を
石川県金沢市で「スポーツ文化ツーリズムシンポジウム」
スポーツ、文化、観光の3庁連携による「第4回スポーツ文化ツーリズムシンポジウム」が、このほど石川県金沢市で開かれた。スポーツと文化芸術資源を結び付け、地域ブランドの確立を目指す取り組みで、過去3回は都内で開かれたが、今回は初めて地方で開催された。トークセッションでは、3庁の長官らが外国人の誘致に向けて、取り組みや展望を語った。(日下一彦)
スポーツと文化資源を結び付け地域ブランド確立を目指す
日本古来の武道や禅の体験が人気、訪日外国人誘致へ展望
文化庁の宮田亮平長官、観光庁の田端浩長官、スポーツ庁次長の瀧本寛氏の3氏が登壇し、今夏の東京五輪と来年5月に関西一円で開かれる生涯スポーツ国際大会「ワールドマスターズゲームズ2021関西」を見据えた各庁の取り組みや展望を語った。スポーツ庁の鈴木大地長官はインフルエンザのため欠席し、代わって同庁次長の瀧本氏が出席した。
まず、瀧本次長が報告。従来のスポーツツーリズムにとどまらず、全国各地の文化芸術資源を結び付けて、新たな観光資源を生み出している取り組みを紹介した。その一例として、昨年金沢で行われた武道ツーリズムに言及し、日本発祥の武道と伝統文化、あるいは精神文化を融合させた希少性の高いツーリズムと評価し、「スポーツを通した地域や経済の活性化に力を入れる取り組みである」と指摘した。
その武道ツーリズムについて、瀧本氏によると、訪日外国人にマーケティング調査したところ、日本で見たいスポーツは野球やサッカーではなく、大相撲や弓道など日本古来の武道への人気が高かった。そこで関連動画を配信したところ、海外で400万回近く再生されたという。それほど、日本の武道への関心が高いことが浮き彫りになった。
さらに、訪日外国人に認知度の高い禅を体験できる金沢ならではのラインアップも好評で、「こうした地域ならではのものを本場で体験することが、忘れ難い特別の経験となっていく。体験者からは高い評価を得たと聞いている」と報告、今後のさらなる取り組みに期待を寄せた。
地方には外国人を引き付ける多くの資源や魅力があるが、ただ、スポーツ関係者はその魅力になかなか気付かないケースが多い。「だからこそ、スポーツ、文化、観光も含めて、多様な方々が一緒になって取り組んでいく。その中で持っている資源に気付き、磨き上げていくことが大切と考えている。まず、金沢市が先頭を走り、大きく推進していける取り組みを進めてもらいたい」(瀧本氏)と、参列していた金沢市の山野之義市長らにエールを送った。
観光庁の田端長官は、「本年度のインバウンドの目標は4000万人で、訪日外国人には全国各地で日本の良さを実体験し、できるだけ長く滞在してもらいたい」と述べ、消費額は8兆円を目標にしていると述べた。その上で「2030年には6000万人、15兆円との大きな目標を立てており、官民挙げて取り組んでいきたい」と抱負を語った。
3庁連携の取り組みについて、同長官は「日本の観光政策、成長戦略の柱であり、特に地方創生の切り札と位置付けている」と指摘し、「文化、歴史、スポーツの取り組みを今後、各地域で意欲的に進めてほしい」と期待した。その上で、訪日外国人について、「日本に来てもらえば、しっかりとした歴史、文化があり、豊かな自然があることが分かる。その中でスポーツイベントもいろいろ魅力があり、その良さを実感してもらえれば、リピーターとして遠距離の人たちにも来てもらえる」と力強く語った。「魅力があるのは地域、地方だから、今が大きなチャンスです」とも語る。
一方、金属工芸家でもある宮田長官は、メダルや聖火を運ぶトーチに触れ、日本の高い製造技術で作られていることを紹介した。特にトーチには白金が入っており、風が強くてもどんな状態でも白金が光って見えると話し、「東京2020が日本(の技術)再発見の新しい機会になる」と語った。
また文化、芸術が成り立つには「三輪車構想」が必要と指摘。「文化、観光、経済の三つの関係が成り立たないと環境はできない。三つをうまく調節してやっていくと発展する」と持論を紹介した。
文化庁が認定している日本遺産にも触れ、これまで67カ所が認定されているが、これを「100カ所にしていく。それぞれストーリー性を持たせており、一極集中ではなく、各地にできている」とその意義を語った。
シンポジウムに続いて、「スポーツ文化ツーリズムアワード2019」の表彰式が行われ、「スポーツ文化ツーリズム賞」には、日光トレイルランニング実行委員会の『日光国立公園マウンテンランニング大会』、『剣道体験ツアーSAMURAI TRIP』など6団体が受賞した。






