「自画像展」、自分自身を見つめるきっかけに
金沢市の「ふるさと偉人館」で開催、今回で12回め
水彩絵の具やクレヨン、鉛筆、版画、さらにパソコン画、切り絵を使って描いた顔、顔、顔……。金沢市の「金沢ふるさと偉人館」で開催中の「自画像展-自分を見つめ、自分を描く-」だ。今回で12回を数え、館内には全応募作品1563点が展示されている。鏡で自分の顔をじっくりと眺めることはあっても、自身を描くことはほとんどないだろう。それだけに、この作品展は自身を見詰めるきっかけにもなっているようだ。(日下一彦)
幼児から中学生まで1563点、作風に見られる指導者の特徴
同館1階フロアに置かれた特設パネルには、子供たちが自由な作風で、思い思いに描いた顔がズラリと並んでいる。画材はさまざまで、これだけ個性豊かな顔が並ぶと実に壮観だ。全国的にも珍しい作品展で、最近では福井市や広島県安芸高田市などにも広がってきた。
今回は市内の保育園児から小中学生まで、昨年より120点多い応募があり、保育園の年長組の出展が最も多かった。毎年、この催しを楽しみに応募している幼稚園や保育園もある。担当している金沢ふるさと偉人館の学芸員・増山仁さんは「園や学校ごとに特色があります。教える先生の特徴がよく出ていて、一堂に展示すると、それが分かります。学校が変わると、パッと作風が変わり面白いですね」とのこと。
確かにクレヨンあり、色鉛筆あり、絵の具ありで、最近はパソコンを使った作品も増えている。それと子供たちは純真なだけに、学校別、園別に分けて展示されていると、教える指導者の視点も見えてくる。
毎回、5人の審査員によって大賞が選ばれている。金沢美術工芸大学長の山崎剛さん、金沢21世紀美術館長の島敦彦さん、金沢市教育長の野口弘さん、金沢市中学校美術部会長代理の原敬子さん、金沢市小学校図工部会長の中本武美さんが担当し、1人2点ずつ選び、10点が額に入って特別展示されている。それ以外の入選作は赤シールが貼られ、各学年、各年齢で2~3割程度選ばれている。年少、年中、年長は多めに、小中学生は抑えめとのことだ。
大賞作品を何点か見ていくと、美術館長大賞を受けた保育園の小川果依さん(年長)は、クレヨンをベースに色紙や毛糸を使って仕上げている。赤のリボンで髪結びし、襟には緑色の蝶ネクタイを付けた。アニメの登場人物をまねたのだろうか、観察力豊かな作品に仕上がっている。
教育長大賞を受賞した藤村信仁君(5年生)は顔にマスクをし、目の下が黒ずんでいて、風邪気味なのか苦しそうな表情が伝わってくる。胸の名札も裏返っていて、鏡を見ながら丹念に描いたことがよく分かる。体調が悪い中でも頑張ったのかなと思わせ、同情を誘うインパクトのある作品だ。
金沢美術工芸大学長賞を受けた野﨑真緒さん(中学1年)は、鉛筆だけでおかっぱ頭の髪の毛一本一本を丁寧に描いている。首筋に陰影の濃淡も付け、中学生らしい作品だ。増山さんによると、2、3年前に大賞に選ばれた女子生徒の話として、「将来、美大に進学したいとの夢を持っていて、本人だけでなく、美術部顧問の先生も大喜び、励みになったと聞いています。今回も選ばれた子供たちの中からそんな児童生徒が出てくればうれしいですね」と目を細めた。同館では受賞者の追跡調査をしていないので、彼女のその後の進路は分からないとのこと。受賞が子供たちにどんな力となったのか、知りたい気持ちにもなる。
表彰式は来年1月5日(日)同館で行われる。増山さんは「保育園や幼稚園の子供たちは、大きな賞状をもらうのは初めてでしょうから、とてもうれしそうですね」と語っている。展示は来年1月19日(日)まで、開館時間は午前9時30分~午後5時、入館料は一般310円、高校生以下無料。問い合わせ電076(220)2474。