迫るバイオテロの危機

 連日、北朝鮮籍と思われる木造船に関するニュースの中で、軍事評論家や専門家(識者)がコメントしている。

 一方、11月30日の参議院予算委員会で、自民党の青山繁晴議員が「北朝鮮の木造船が次々に漂着している。異様だ。北朝鮮は兵器化された天然痘ウイルスを持っている。もし、上陸者ないし侵入者が、天然痘ウイルスを持ち込んだ場合、ワクチンを投与しないと無限というほど広がっていく」と問題提起した上で、バイオテロにつながりかねないとの認識を示した。

 青山議員のようにバイオテロにまで言及し、この問題を分析している人は非常に少ないが、果たしてそれでいいのか。

 北朝鮮は、神経性、水泡性、血液性、嘔吐(おうと)性、催涙性など、有毒作用剤を複数の施設に分散貯蔵し、炭疽(たんそ)菌、天然痘、コレラなどの生物兵器を自力で培養及び生産できる能力を保有しているという分析もある(韓国国防白書)。

 そのため、韓国に駐留する在韓米軍兵士は、2004年から天然痘のワクチン接種を受けている。

 米国はテロ対策のため天然痘ワクチンの備蓄を強化し、2001年に1200万人分だった備蓄量を2010年までに全国民をカバーする3億人分まで増やしている。

 日本でも天然痘テロに備えて、厚生労働省がワクチンの備蓄を開始しているが、備蓄量は公表されていない。

 今後、北朝鮮による天然痘ウイルスをはじめとする生物兵器を使用したバイオテロが、私たちの身近なところで起きる可能性もある。

 相次いで漂着している木造船に積んで日本国内に生物兵器が持ち込まれた可能性も拭い切れない。

 さらに言えば、朝鮮半島有事(第2次朝鮮戦争)が勃発した場合を想定して、当時の防衛庁が平成5(1993)年に行った研究では、戦火を逃れ約5万人の北朝鮮難民が、日本に押し寄せると見積もっている。そのとき、武装難民と、そうでない難民とを区別する(見分ける)ことが可能なのか。

 日本人は、朝鮮半島有事のカウントダウンがすでに始まっているという危機意識を真剣に持つべき段階にきているのだ。

(濱口和久)