ロシア、反米軍情報戦を強化

ビル・ガーツ

 ロシアは、東欧の各国政府や、駐留する米軍への信頼を損ねることを狙った偽情報活動を活発化させている。米政府当局者が明らかにした。

 米当局者は「数多くのフェイクニュース、プロパガンダ、うそがこの2週間の間に出回った。一部にすぎないが特に挙げるとすれば、ポーランド、エストニア、ウクライナで顕著だ」と偽情報がインターネット、ニュースメディアを通じて拡散していることを指摘した。

 ラトビア国防相は今週に入り、声明を出し「北大西洋条約機構(NATO)の活動や同盟国軍が関わるさまざまな状況に関して間違った報道がこのところ、増加している」と懸念を表明した。

 偽情報の直近の例としては、ロシアのテレビ局ベスチが14日に報じた映像が挙げられている。この映像は、英国のタブロイド紙サン、米FOXニュース、ロシア国営のタス通信とスプートニクでも取り上げられた。映像では、在欧米空軍元司令官のコメントが伝えられているが、この元司令官は欧州軍に対して、そのような発言はしていないことを明らかにしている。

 12日には東欧をカバーしているニュースサイト、バルチック・ニュース・サービス(BNS)が、ラトビアの米兵らが化学兵器マスタードガスの被害を受けたと報じたが、これも事実ではないという。

 この報道は、米兵が演習中の戦車の不具合から、一酸化炭素を吸い首都リガの病院に収容されたという米軍紙スターズ・アンド・ストライプスのニュースをもとに捏造(ねつぞう)されたものとみられている。

 この演習は、ラトビア軍との実弾演習で、ロシアの侵攻に備え東欧諸国の防衛力を強化することを狙ったものだ。

 ロシアは、東欧でのロシアの影響力を取り戻そうと、米軍、NATO軍の信頼を損なわせるために情報戦力を駆使している。

 ラトビア国防省はこの報道について「露骨なプロパガンダ」と強く非難、「BNSのリトアニア、ロシア版では、大量のマスタードガスがバルト海の海底に沈められており、それがいつ爆発するかはクレムリンだけが知っていると報じられている」と指摘した。

 また「これらのプロパガンダは、心理的な影響を及ぼす未確認の情報を使って、NATO軍への大衆の信頼を損ねることが目的」と主張した。

 ロシア政府は、ラトビア、リトアニア、エストニアで訓練を行っている米軍はロシア侵攻の準備をしていると訴えている。

 情報戦専門家のマイケル・ウォルター氏は「米軍の指導部は、たまに批判したり、対応を検討したりする程度で、ほとんどこの問題を無視してきた」と警告を発した。

 反NATO、反米の偽情報やプロパガンダの責任をモスクワに対して強く追及したのはレーガン大統領が最後だった。米国の偽情報対応能力のほとんどは、旧ソ連崩壊後、ジョージ・H・W・ブッシュ政権中に失われた。