中国を利する無責任報道

 昨年は安全保障関連法に始まり、安全保障関連法に終わった1年だったが、今年はどのような1年になるのだろうか。

 昨年12月末に放送された「1年を振り返る年末特番の報道番組」の多くが、相変わらず安全保障関連法が昨年9月に成立したことを否定的なスタンスで放送していた。TBSでは日本を代表する女優のひとりである吉永小百合氏がゲストとして番組に出演し、安全保障関連法に反対するコメントを述べていた。

 一方、テレビ朝日「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスターが、今年3月で番組を降板すると発表した。「報道ステーション」は終始、安全保障関連法に反対する報道を続けてきた。

 安倍晋三政権にこれといった失政がなければ、今年夏の参議院選挙が終わるまでは、多くのマスコミは安全保障関連法を問題視するキャンペーンを張るに違いない。キャスターが誰に交代しようが「報道ステーション」も同様だろう。

 マスコミは第4権力といわれている。政権をチェック・監視する役割を果たしていることは、私も認めている。ただ、安倍首相が嫌いだからといって、安全保障関連法を「戦争法案」と煽(あお)り、国民を惑わし、不安がらせるような報道は行き過ぎではないのか。

 中国の南シナ海での人工島の建設にともなう周辺各国との軋轢(あつれき)による衝突の可能性や、日本のシーレンの安全確保、そして、東シナ海での軍事施設にも転用が可能なガス田開発の動向を見れば、安全保障関連法の必要性は当然であり、マスコミの無責任な報道は、中国を利するだけである。

 一方、産経新聞(昨年12月31日付)の1面に「陸自が極秘に邦人『救出』訓練」という記事が掲載された。安全保障関連法の成立を受けて、陸自「中央即応集団」が11、12月の両月、海外でテロなどに巻き込まれた邦人を救出する訓練を極秘に行っていた、というものだ。

 安全保障環境の変化に加えて、今後、テロに日本人が巻き込まれる可能性が高まるなか、安全保障に対する正しい認識を国民一人ひとりが持たなければならない。

(濱口和久)