幹部養成と入試制度
防衛大学校(以下・防衛大)は文部科学省所管外の大学として昭和27年8月1日、保安大学校として設立される。昭和29年7月1日に校名を防衛大と改名し、昭和30年4月1日から、神奈川県横須賀市走水での教育がスタートした。
防衛大ではさまざまな組織の改編や教育体系・入試制度の見直しがいままで行われてきた。特に入試制度の見直しでは、平成4年入学の学生から推薦入試制度が導入され、毎年夏休みが終わると推薦入試が実施されている。
現在、防衛大では①推薦採用試験(成績優秀かつ生徒会活動、部活動等で顕著な実績を収めた者を対象。高等学校長等の推薦が必要など)②自薦の総合選抜採用試験(各種活動に主体的に取り組み、その活動を通じて学んだことを防衛大生及び幹部自衛官として活かすことのできる者を対象。大学教育を受けるに足る一定以上の学力の有無を評価するとともに、校内での宿泊を通じて能力・資質・特性を多角的・総合的に評価する)③一般採用試験前期日程(従来の一般受験)④一般採用試験後期日程(運動部の現役生や国公立大学受験層など受験準備不足から一般前期等を躊躇〈ちゅうちょ〉している者等へ受験機会を提供する)の4つの入試制度がある。
推薦入試の導入は、幅広く優秀な学生を確保することを目的としてスタートしたが、将来の幹部自衛官を養成することを目的とした防衛大の入試制度は、少子化などの受験環境の変化に関係なく、③と④の一般採用試験だけにするべきである。優秀な学生を確保したいという防衛大の思惑はわからないではないが、推薦入試を導入したから優秀な学生が入学するとは限らない。実際、留年や退校した学生も多くいる(学校関係者)。
加えて受験科目数の削減は、優秀な学生を確保することとは逆行する。科目数を減らすのでなく、逆に文系、理系に関係なく、国数英理社を受験科目に課すべきだろう。
幹部自衛官に必要な資質は、まずは高校までの基礎学力であり、それを無視した入試制度は、将来的には防衛大の劣化に繋(つな)がるだけである。
(濱口和久)