幼稚な安保論争
安全保障関連法案を審議する6月19日の衆議院特別委員会での政府と民主党の辻元清美氏のやり取りに注目してみた。
辻元氏は、徴兵制を禁止する明文規定がないのに、なぜ徴兵制を禁じているのかをただした。
菅官房長官は、憲法18条の「意に反する苦役」を禁じる規定などから「憲法上許容されない」と答弁した。
これに対し、辻元氏は「集団的自衛隊の行使容認と同じ手法で、安保環境によって徴兵制ができるようになるのではないか」と指摘すると、横畠法制局長官は「今後とも違憲だという判断の変更はありえない」と否定した。
本当に徴兵制に反対ならば、「憲法改正によって『徴兵制の禁止』を条文の中に入れるべきだ」と質問するべきではないのか。辻元氏の質問のスタンスは、単なる左翼活動家と同じレベルでしかない。
政府の見解にも失望した。徴兵制は「意に反する苦役」などではないはずだ。
自衛隊だけで国を守ることは到底できない。日本人であれば、誰もが国を守る一翼担っており、国を守ることを「意に反する苦役」とすれば、国家の存立自体が危うくなる。
辻元氏は安保関連法案を「戦争のできる国づくりを進めている」とも述べているが、法案の本質は、日米共同で抑止力を強める「戦争抑止法案」である。
ところが、本紙や産経新聞、読売新聞を除く、テレビ・新聞の多くが、安保法制を「憲法違反の戦争法案」だとして、ネガティブキャンペーンを展開しているため、自衛隊への入隊希望者が4割も減っているという(自衛隊関係者)。
日本では安保闘争、PKO派遣、テロ特措法等の審議の中で、つねに「日本が戦争に巻き込まれる」として、野党は反対してきた。
しかし結果は、戦争に巻き込まれるどころか、平和を享受してきたことは歴史が証明している通りである。
このまま幼稚な安保論争を続ければ、日本は世界の笑いものになるだけだ。
(濱口和久)





