北最高学府の裏事情


地球だより

 北朝鮮が最高学府として誇る金日成総合大学(略称、金大)は、「優秀な幹部候補育成」が建学の精神だ。だから昔から労働党の任務をこなすのに必要な政治や革命歴史、哲学など統治の「能書き」を学ぶ人文系が人気だという。先進技術を競い合う21世紀に理工系出身者が重宝されがちな世界の潮流とは、ここでも見事に逆行している。

 ところが、今から10年ほど前に異変が起きた。生物化学関連の学部に志願者が殺到したのだ。北朝鮮にバイオテクノロジーブーム到来かと思いきや、スイス留学帰りの金正恩・第1書記の妹、金与正氏が入学するとのうわさが広まったためだ。“ロイヤルファミリー”と知り合いになり、出世の取っ掛かりをつかもうと有り金をかき集めて大学関係者に取り入ろうと大騒ぎになったそうだ。同時期、数学科に息子を入れたある脱北者から聞いた話だ。

 親の地縁、血縁、財力が子供の大学進路とその先の将来を決定してしまう「出世の方程式」は、悲しくも同民族同士の南北に共通するようだ。苦労して手に入れた金大ブランドは、韓国の脱北者社会でも一つのステータスシンボルとして有効だ。

 ただ、ソウルの金大同窓会のある男性が、別の大学出身だったことがばれた後も「金大出身ということにしておいてくれ」と泣き付き、会の“善意”に甘えて今も金大の肩書で活動していると聞き驚いた。学歴コンプレックスが高じた学歴詐称まで同じではしゃれにならない。

(U)