「父の日」行事への配慮
「父の日」を前に、保育園では「父の日」の行事をやらないところが増えているというニュースを耳にした。離婚家庭の子供への配慮が理由だ。
日本は年間約22万組が離婚し、親の離婚を経験した未成年者は年間23万人に上る。増える離婚家庭の子供のケアは重要な問題となっている。離婚後の子供のケアに関する海外の著作を翻訳紹介している、家事調停員の丸井妙子さんは、自身の著書『離婚の苦悩から子どもを救い出すために』のなかで「片親疎外症候群」の深刻な実態を伝えている。
「片親疎外症候群」とは1980年代に精神科医のリチャード・ガードナーが提唱した概念。両親の離婚や別居などにより、監護親が別居親に対する誹謗中傷、悪口などマイナスイメージを子供に吹き込み、別居親と引き離すよう子供を仕向け、正当な理由もなく片親に会えない状況を指す。
子供が別居親との面会や交流を拒否する、あるいは監護親が子供を別居親と引き離すことによって子供が精神障害を抱えたり、非行に走ったり、子供の健全な成長が損なわれてしまう。
米国は面会交流権が法的に認められているため、離婚後の子供がもう一人の片親と頻繁に親子交流をするのが一般的だ。多くの研究調査から、離婚家庭の子供が別居親と面会し、親子交流することが子供の心の成長には絶対必要という考え方が基本にある。
ところが、日本は子供が別居親と会わない方がいいという社会通念上の思い込みか、母親が親権を持つ子供では半分以上が父親と接触できない状況にある。丸井さんは、同書で片親疎外の親子の悲劇をなくすために共同養育の考え方が重要だと強く訴えている。たとえ、両親が離婚したとしても子供にとって父親の存在は消すことはできない。共同養育の考え方が日本で広がっていけば、「父の日」への配慮など必要ないだろう。(光)