文民統制と文官統制

 日本政府は3月6日、防衛官僚(文官・背広組)と自衛官(制服組)を法制上、対等に位置付ける防衛省設置法の改正案を閣議決定した。

 現在の防衛省設置法では、防衛大臣が陸海空の各幕僚長に対して「指示」や「承認」を行う場合、文官である官房長や局長が「防衛大臣を補佐する」と明記されている。

 そのため、官房長や局長が各幕僚長に対して「指示」を行い、防衛官僚が自衛官をコントロールする「文官統制」があるかのような間違った認識が続いてきた。

 中谷元防衛大臣は閣議後の会見で、「日本政府は文官統制という考え方はとっていない」と明言。同日の衆議院予算委員会でも、政治が軍事をコントロールする「文民統制(シビリアンコントロール)」に関する日本政府の統一見解を示した。その中で「文官の役割は防衛大臣を補佐することであり、内部部局の文官が自衛官に対し指揮命令する関係にはない」と述べた。

 この見解は、諸外国の軍隊では当たり前のことであり、日本にも文民統制の正しい理解が進むことを期待したい。

 一方、民主党の辻元清美衆議院議員は、予算委員会の中で、日本政府の統一見解を無視して、文民統制の意味を十分に理解しないまま、中谷防衛大臣に対し、「あなたは防衛大学校を卒業し、陸上自衛隊の勤務経験があるのに、文官統制の意味を習っていないのですか?」という悪意を持った失礼な質問をしていた。

 「国民によって選ばれた政治家が自衛隊をコントロールすることが文民統制であり、文官が自衛隊をコントロールすることがシビリアンコントロールではない」と中谷防衛大臣が答弁したところ、辻元衆議院議員は、言いたい放題の反論をしていたが、このような議論は時間の無駄でしかない。

 辻元衆議院議員のような人物が民主党内に存在する限り、民主党はまともな安全保障政策など打ち出せないだろう。

 今回の防衛省設置法の改正によって、制服組が能力を発揮する場面が増えることを期待したい。

(濱口和久)