丸刈り校則の思い出


 春の甲子園大会が21日に開幕する。高校球児と言えば、坊主頭を思い浮かべる人が多いのではないか。長髪が当たり前の時代になって、丸刈りを時代遅れと感じる人もいるようだが、筆者は丸刈りの生徒にすがすがしさを感じる。

 中学卒業まで丸刈りで通した筆者には、丸刈り校則をめぐる痛快なエピソードがある。1970年代だった。通っていた中学は比較的自由な校風で、長髪が認められていた。一学年200人中、丸刈りは3、4人だけだった。

 3年生の時、学校が校則を改めて、男子生徒は全員丸刈りにすると言い出した。中学3年生ともなれば、異性を妙に意識し出す年頃。休み時間になると、クシを取り出して、頭をなではじめる男子が続出した。その中学生らしからぬ光景を、春の人事異動で他校からやってきた教師が問題視したのだった。

 もちろん、長髪の生徒たちは大反対し、大騒ぎとなった。当時、筆者は風紀委員長。友人たちと相談し、生徒大会で演説をぶつことになった。

 「中学生なのだから、髪型くらい自分で決める。長髪が認められる中で坊主頭にしているから価値があるのであって、学校に強制されてやったら価値が下がる」と、青い頭をなでながら訴えたから、やんやの喝采を浴びた。

 どうせ丸坊主だったのだから、校則はどちらでもいいというのが本音。ただ、教師の言いなりになるのが癪(しゃく)に障っただけだった。結局、筆者の名演説も空しく、全員丸坊主が決まった。それまで筆者に「アオ」(頭が青いのでついたあだ名)と言って笑っていた友人たちの頭がみごとな青になったのを見て大笑いした。

 丸刈りを校則にする中学校は2013年でなくなったと言われてるが、それでもあえて丸坊主でいる生徒を見ると、自分の中学生時代を思い出し嬉しくなる。(森)