ユムケラー氏の辞任表明を歓迎


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「全ての人のための持続可能なエネルギー」機関が入っているアンドロメダ・タワービル(2014年2月20日、撮影)

 潘基文国連事務総長が2013年に新設した「全ての人のための持続可能なエネルギー」(SE4ALLL)機関の事務総長特別代表、カンデ・ユムケラー氏は12日、今年7月をもって辞任するとアドバイサリー・ボートに通達した。同氏の辞任表明に対し、これまでのところ「惜しい」とか「留任」を求める声は聞かれず、加盟国からむしろ歓迎されている、といった有様だ。もちろん、それには理由はある。

 ユムケラー氏(55)は2期、8年間(2005年~13年)、UNIDO(国連工業開発機関、本部・ウィーン)事務局長を務めたが、その期間、英国、フランス、オランダ、ニュージランドなど多数の加盟国が次々と脱退していった。UNIDOの腐敗と運営の非効率性に嫌気がさした結果だった。そしてその腐敗体質の元凶はユムケラー氏だったからだ。当方はこのコラム欄で数回、ユムケラー氏の腐敗体質、ミス・マネージメント、縁故主義などを内部情報に基づいて報じてきた。

 その事務局長が2年前、国連事務総長が新設した新機関のトップに人事された時は正直言って国連事務総長の人間を見る目の無さを嘆いたものだ(「潘基文国連事務総長の人事能力を憂う」2014年2月22日参考)。同氏はUNIDOという国連専門機関を破壊した張本人だ。そのうえ、エネルギー問題でも素人だったのだ。どうして彼が、といった声が当時は加盟国からも聞かれたものだ。

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ユムケラー氏(ウィキぺディアから)

 ユムケラー氏は辞任表明の中で「数カ月前、国連事務総長には今年7月で辞任したい希望を伝えた。自分は過去19年間余り国連機関で歩んできた。それだけに、辞任決定は決して容易ではなかったが、困窮下にある祖国の為に奉仕しなければならない時が来たと感じてきた」と主張、今後、祖国の復興のために全力を投入していきたいと決意を述べる一方、これまで支援してくれた国連事務総長に感謝を表明している。

 ウィーンのUNIDO職員は、「ユムケラー氏はSE4ALLでは欧米加盟国の監視もあって自由に活動できないことが分かったので、早期辞任を決めたのだろう」と、同氏の辞任表明を冷ややかに受け取っている。

 ユムケラー氏を良く知る外交官は、「彼は出身国シェラレオネの大統領選(2018年)に出馬するため、これまで多くの布石を打ってきた。UNIDO事務局長時代、ウィーンの事務所にほとんどとどまらず、世界を飛び回ったのは顔を売り、国際社会で人脈を構築するためだった」という。同外交官によれば、「ユムケラー氏はここしばらくはシェラレオネ大統領選に全力を投入する考えだが、可能性が出てきたら、国連事務次長ポストを狙ってくるだろう」という。

 西アフリカのシェラレオネはアフリカ諸国の中でも最貧国であり、エボラ出血熱(EVD)が猛威を振るっている地域だ。その祖国の復興のために努力したいというユムケラー氏の心意気は評価したい。母国復興のために健闘して頂きたいものだ。

(ウィーン在住)