海自待望の多機能艦
今年3月、海上自衛隊最大級の護衛艦「いずも」(ヘリコプター搭載護衛艦)が就役する。
「いずも」は大東亜戦争の緒戦に機動部隊の旗艦として活躍した旧海軍の空母「赤城」とほぼ同じ全長248㍍の飛行甲板を持ち、基準排水量1万9500㌧の大型艦だ。
現在、各国の海軍が運用する同規模の艦には、スペイン海軍の強襲揚陸艦兼軽空母「フアン・カルロス1世」、イタリア海軍の軽空母「カヴール」などがある。
すでに海自に配備されている「ひゅうが」型ヘリコプター搭載護衛艦は、艦単独での戦闘能力を有しているのに対し、「いずも」は、艦そのものの戦闘能力は低く抑え、防御面は随伴するイージス艦などに任せ、防御兵装は高性能20㍉機関砲(CIWS)と短射程の対空ミサイル「シーラム」だけとなり、司令部機能(旗艦)を重視した設計となっている。
一方、航空機中枢艦として、哨戒ヘリ、救難・輸送ヘリを搭載でき、陸空自ヘリや垂直離着陸輸送機オスプレイの発着ができる。
後甲板部にはサイドエレベーターが採用され、整備作業を中断することなく、ヘリの出し入れも可能だ。
舷側歩板(サイドランプ)も強化され、迅速に車両等を搭載・卸下(しゃが)できる高速輸送艦の役割を担い、陸自の多連装ロケットシステムや空自の地対空誘導ペトリオットも積み込める。
護衛艦として「臨時燃料輸送装置」を初めて装備し、煙突間に設置された専用ホースを並走する護衛艦まで伸ばして洋上給油をすることもでき、補給艦の機能も有している(自衛隊専門紙・朝雲新聞平成27年1月1日付)。
さらに、「ましゅう」型補給艦の医療システムを基本にして、35床の入院用のベットがあり、「おおすみ」型輸送艦と同様、格納庫内に陸自の野外手術システムを展開でき、病院船としても活用できる。加えて大規模災害時、洋上での対策本部を設置できる機能を兼ね備えた艦なのだ。
まさに、海自待望の艦が「いずも」なのである。
(濱口和久)